
AI技術は業務の効率化や新規事業の創出に欠かせない存在となりつつあります。しかし、AI開発には高額な初期投資や専門人材の確保が必要で、中小企業やスタートアップにとっては大きな負担となりがちです。
そこで注目されているのが、国や自治体が提供する補助金制度です。補助金を活用すれば、初期段階から、本格的なAIシステム開発・導入に至るまで、費用負担を大幅に軽減できます。
本記事では、AI開発に利用できる代表的な補助金の種類や申請時のポイント、探し方をわかりやすく解説します。
AI開発に利用できる補助金4選
AI開発には高額な初期投資が伴うこともあり、中小企業や小規模事業者にとっては導入のハードルが高くなりがちです。しかし、国や自治体が提供する各種補助金を活用することで、PoC(概念実証)から本格導入までの費用負担を大きく軽減できます。
ここでは、2025年時点でAI開発に活用可能な補助金を4つ厳選してご紹介します。いずれもAIやDXの推進を重視しており、自社の課題解決に直結するAIソリューション導入を検討している企業にとっては有力な選択肢となります。
補助金名 | 最大補助額 | 補助率 | 主な対象者 | 対象となるAI活用例 | 備考 |
ものづくり補助金 | 最大1,250万円 | 最大2/3 | 中小企業 | AI画像解析、予測モデル、設備連携AIなど | 技術革新や生産性向上が必要 |
新事業進出補助金(事業再構築補助金の一部) | 最大8,000万円 | 最大3/4 | 売上減少企業など | AIを用いた新事業モデル、業態転換 | 売上減少・再構築要件あり補助額・補助率は事業規模や枠によって異なるため要確認 |
中小企業省力化投資補助金 | 最大1,500万円 | 1/2〜2/3 | 中小企業全般 | 自動配膳ロボ、AI受付、業務自動化 | カタログ製品中心、汎用AI機器向け |
小規模事業者持続化補助金 | 最大50万円 | 2/3 | 小規模事業者 | チャットボット、AI予約管理、AI販促ツール | 販路開拓が主目的、個人事業主も可特別枠が適用の場合、最大補助額は250万円 |
1. ものづくり補助金
「ものづくり補助金」は中小企業の生産性向上を支援する代表的な補助制度です。特に、AIによる検品自動化・画像解析・予測モデル開発などの先端技術活用プロジェクトが積極的に採択されています。
補助額 | 最大1,250万円(※枠により異なる) |
補助率 | 中小企業2/3小規模事業者2/3 |
対象経費 | ソフトウェア開発費、機械装置費、クラウド利用料など |
活用事例 | 製造業におけるAIによる不良品検知、物流業における最適ルート設計AIの開発 など |
2. 新事業進出補助金
事業再構築補助金の中でも「新事業進出枠」は、業態転換や新市場開拓のためのAI導入・開発の後押しに有効です。たとえば、アナログ業務からの脱却を目指す企業が、AIチャットボットや自動応答システムを開発・導入するケースも補助対象です。
補助額 | 100万円〜8,000万円(事業規模に応じて) |
補助率 | 中小企業2/3(条件により3/4) |
対象経費 | システム開発費、外注費、広告宣伝費など |
活用事例 | EC事業者がAIレコメンドエンジンを開発して新商品提案精度を向上させる など |
3. 中小企業省力化投資補助金
2024年から新設された「中小企業省力化投資補助金」は、人手不足を背景に、AIやIoTを活用した自動化・省力化投資を強力に支援する制度です。具体的には、AI画像認識システムやRPAの導入なども対象となり、現場の生産性向上を図れます。
補助額 | 最大1,500万円 |
補助率 | 原則1/2(条件付きで2/3) |
対象経費 | AI搭載機器、ソフトウェア、システム連携費用など |
活用事例 | 飲食店におけるAI自動配膳ロボットの導入、建設業における画像解析AIによる安全管理 など |
4. 小規模事業者持続化補助金
小規模事業者を対象にした本補助金は、販路開拓や業務効率化に資する取組を支援する制度です。AIによる顧客分析ツールや、AIチャットボットの導入、予約・注文の自動化システム導入も対象となり得ます。
補助額 | 最大250万円(特別枠含む) |
補助率 | 2/3 |
対象経費 | ソフトウェア導入費、外注費、広告費など |
活用事例 | 美容院がAI予約管理システムを導入、ECサイトがAI接客ツールを導入 など |
AI開発に補助金を活用すべき理由とは?
AI技術の進化に伴い、業務効率化や顧客体験の向上を目的にAIを導入する企業が増えています。しかし、AI開発には多額の初期投資や検証期間が必要であり、特に中小企業やスタートアップにとってはハードルが高いのも事実です。
そこで注目したいのが、国や自治体が提供する各種「補助金制度」です。補助金を上手に活用すれば、開発初期のコスト負担を大きく軽減できるだけでなく、事業の成長加速や競争力向上にもつなげられます。
以下では、AI開発において補助金活用が効果的な理由を3つの観点から解説します。
高額なAI開発コストを抑えられる
AI開発には、アルゴリズム設計・データ収集・システム構築など多くの工程があり、初期投資として数百万円〜数千万円の費用がかかるケースも珍しくありません。さらに、開発には専門人材の確保やクラウド環境の整備など、ランニングコストも含めた継続的な資金が必要です。
こうしたコスト面の負担を軽減できるのが補助金の最大のメリットです。たとえば「ものづくり補助金」や「事業再構築補助金」などでは、最大1,000万円以上の補助が受けられる場合もあり、自社単独では困難だったAI開発に踏み切るきっかけとなります。
実証実験(PoC)やプロトタイプ制作にも対応
本格導入の前段階として、AIの有効性を検証するためのPoC(概念実証)や試作品の開発にも補助金を活用できる可能性があります。
AIプロジェクトでは、「まずは少額から小規模なモデルで検証したい」というケースが多く、そうした実験段階の予算確保に補助金を活かすことが可能です。特に「ものづくり補助金」や「中小企業省力化投資補助金」では、開発費や外注費、ソフトウェアライセンス料などが補助対象になるため、技術検証からスムーズに本番運用へつなげやすくなります。
ただし、制度によっては適用外の場合もあるため、PoCなどの開発にも活用できるかは要確認です。
AI導入が経営課題解決につながる時代背景
人手不足や業務の属人化、顧客ニーズの多様化など、現代の企業はさまざまな経営課題に直面しています。これらの課題に対して、AIによる自動化・効率化・パーソナライズ対応は極めて有効な手段となっており、今や「AI活用=経営戦略の一部」といっても過言ではありません。
実際、補助金制度の多くが「生産性向上」や「デジタル化」「新分野展開」といった経済政策の方向性と連動しており、AI導入に積極的な企業は制度上も優遇されやすくなっています。つまり、補助金活用は単なる資金支援にとどまらず、時代に即した経営判断を後押しする制度でもあるのです。
また、以下の記事ではAIの主な開発手法について解説しています。あわせてご覧ください。
→ AI開発の主な手法とは?開発に必要な言語やAIを活用したシステム開発の事例も紹介
AI開発で補助金を申請する際のポイント
AI開発に補助金を活用することで、コスト負担を抑えつつ先進的な技術導入を実現できます。しかし、補助金は「申請すれば必ずもらえる」ものではなく、採択には計画性と書類作成の質が問われます。
ここでは、AI開発を目的に補助金申請を行う際に押さえておくべき4つの重要ポイントをご紹介します。
ポイント1. 要件を満たす事業計画を立てる
補助金ごとに、対象事業者や事業内容に関する明確な要件が定められています。たとえば「ものづくり補助金」では「革新的サービスの提供」や「生産プロセスの改善」が求められます。
ほかにも「事業再構築補助金」では「売上減少」や「業態転換」などが前提条件です。
AIを用いた開発がその補助金の趣旨に合致しているかを確認し、要件に適合した事業計画書を構築することが第一歩です。申請時は「単なるIT投資」ではなく、どのように社会的課題や経営課題を解決するのかを明確に描くことが重要になります。
ポイント2. 「生産性向上」や「新分野展開」に寄与することを明記する
多くの補助金制度は、国の経済政策やDX推進方針と連動しています。特に、以下のようなキーワードは審査項目にも直結するため、事業計画書にしっかりと反映させる必要があります。
- 生産性向上(例:AIによる作業時間短縮、エラー削減)
- 業務効率化(例:チャットボット導入で対応時間削減)
- 付加価値向上(例:AIによる新サービスの提供)
- 新分野展開(例:AI画像認識技術を活かした異業種進出)
ただ「AIを導入したい」と書くだけでは不十分です。導入によってどのような変化や効果が見込まれるかを定量的に示すことが、審査通過の鍵を握ります。
ポイント3. ITベンダー・AI開発会社と連携する
AI開発に不慣れな中小企業にとって、信頼できる開発パートナーとの連携は不可欠です。補助金の多くでは、外注費や開発委託費も補助対象となるため、早い段階からITベンダー・AI開発会社との連携体制を整えておくことが重要です。
さらに、開発会社の実績・信頼性・見積書の妥当性は審査にも影響します。可能であれば、過去に補助金案件を扱った経験があるベンダーを選ぶと安心です。
- PoC対応や短納期実績のあるAI企業
- IT導入補助金のITベンダー登録事業者
- 書類作成の支援実績があるパートナー企業
このような連携先を選定することで、申請書の精度も高められます。
ポイント4. 申請サポートを活用するのも有効
補助金の申請書類は、事業の背景・課題・目的・効果を論理的に構成し、読みやすく整理する力が求められます。社内で対応が難しい場合は、認定支援機関・商工会議所・専門コンサルタントなどの外部支援を受けるのもひとつの方法です。
特に「ものづくり補助金」や「持続化補助金」は、認定支援機関の確認書が必要なケースもあるため、早めに相談しておくとスムーズです。
- 無料相談窓口を活用する(商工会・自治体など)
- 補助金コンサルに依頼して申請書の質を向上させる
- 自社の採択実績がある支援機関を探す
このような工夫により、申請成功の可能性を大きく高めることができます。
また、以下の記事ではAIの開発費用について解説しています。あわせてご覧ください。
→ AI開発の費用相場を解説!費用を抑えるコツやおすすめの開発企業も紹介
AI開発に利用できる補助金の探し方
AI開発に活用できる補助金制度は、国・自治体・業界団体などさまざまな機関から公募されています。しかし、補助金制度は毎年内容が見直されるほか、名称や対象要件が異なるため、「自社に合った補助金をどこでどう探せばよいか分からない」という声も少なくありません。
ここでは、最新かつ適切な補助金を見つけるための4つの方法をご紹介します。
1. 公式の補助金ポータルサイトを活用する
AI開発に限らず、中小企業向け補助金情報の大半は、経済産業省や中小企業庁などの公式ポータルサイトで公表されています。特に以下のサイトは、常に最新情報が集約されており、検索性にも優れています。
ミラサポplus(中小企業庁)
J-Net21(中小企業基盤整備機構)
支援策チラシ一覧(中小企業省)
検索時は、「AI」「IT導入」「PoC」「DX」「省力化」といったキーワードを掛け合わせると、関連性の高い補助金がヒットしやすくなります。
2. 自治体・商工会議所の支援情報をチェックする
国の補助金だけでなく、都道府県や市区町村などの自治体独自のAI導入支援制度も注目すべきポイントです。特に東京都、神奈川県、愛知県、大阪府などでは、スタートアップ支援や実証実験支援の一環でAI関連補助金が公募されることがあります。
また、各地の商工会議所・商工会・中小企業支援センターでも、地域事業者向けに補助金情報を提供しています。会員であれば申請サポートを受けられるケースもあるため、定期的に情報を確認するとよいでしょう。
3. IT導入補助金ポータルやカタログを確認する
AIツールやサービスの導入を検討している場合は、「IT導入補助金」専用サイトも要チェックです。IT導入補助金には、補助対象として登録された「ITツール」や「ITベンダー」の一覧がカタログ形式で公開されており、AIチャットボット、予約管理システム、分析ツールなども多数含まれています。
導入したいAIサービスが補助対象かどうか、事前に確認しておくことがポイントです。
4. 専門家や支援機関に相談する
補助金情報は流動的で複雑なため、中小企業診断士・税理士・補助金コンサルタント・認定支援機関などの専門家に相談するのも有効です。
彼らは最新の補助金情報や申請傾向を把握しており、自社に適した補助金の紹介や申請サポートも提供しています。特に初めて補助金を活用する企業や、申請書の作成に不安がある企業にとっては、非常に心強い存在です。
まとめ
AI開発は今後の事業成長や競争力強化に直結する投資ですが、コストやリスクの大きさが導入の障壁になることも少なくありません。そんなときこそ、国や自治体が提供する補助金を上手に活用することが鍵となります。
要件に合った事業計画を立て、AI導入が生産性向上や新分野展開につながることを明確に示すことで、採択の可能性を高められます。補助金を味方につければ、PoCから本格導入までの道のりがぐっと現実的になり、自社の未来を切り拓く力となるはずです。
この記事の著者

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