
オフショア開発は、単なるシステム開発にとどまらず、リリース後の運用・保守業務においても有効な手段です。特に、コストの最適化や24時間体制の構築、属人化の解消といった観点から注目されており、多くの企業が導入を進めています。
本記事では、オフショア開発における運用・保守契約の概要から、委託可能な業務範囲、国内保守との違いや契約形態について解説します。運用・保守体制の見直しや外部委託をご検討中の方は、ぜひ最後までご覧ください。
オフショア開発における運用・保守契約とは
オフショア開発では、ソフトウェアやシステムの開発業務だけでなく、運用・保守業務も委託できます。まずは、オフショア開発を導入した場合の運用・保守業務の概要について見ていきましょう。
オフショア開発で委託可能な運用・保守業務
オフショア開発における運用・保守契約とは、海外拠点を活用した開発体制やエンジニアチームに対して、ソフトウェアやシステムの運用・保守業務を委託する契約形態を指します。リリース後の安定運用や障害対応、セキュリティ管理、定期的なアップデートといった運用・保守フェーズを外部に委託することで、内製リソースの負担を軽減し、システムを効率的に管理できます。
オフショア開発では、次のような運用・保守業務を委託可能です。
- 監視業務(モニタリング)
- 障害対応・バグ修正
- 定期メンテナンス・アップデート
上記のような業務に加えて、アカウント設定やログ管理など、業務プロセスが標準化された定型作業も委託しやすいのが特徴です。オフショア開発の導入は、業務の効率化や属人化の解消にも効果的です。
国内保守との違い
オフショア開発における保守業務と国内保守では、コスト構造・対応体制・コミュニケーション面などに違いがあります。
コスト構造に関しては、オフショア開発は人件費が低いため、国内保守と同等の対応をより低コストで実現可能です。特に、長期的に保守コストを抑えたい企業にとっては、オフショア開発が魅力的な選択肢です。
また、オフショア開発には、海外拠点との時差を活かしたシフト体制により、24時間対応を構築しやすいという特徴があります。国内では対応が難しい夜間や休日のインシデントにも対応可能です。
一方で、オフショア開発には、言語や文化の違いによって伝達ミスや認識のズレが生じやすいという課題があります。コミュニケーションのスピードや正確性を重視する場合は、国内保守のほうが適しています。
オフショア開発を導入する際は、ブリッジSEの活用や明確な仕様書の整備など、円滑なコミュニケーションを図るための工夫が不可欠です。
以下の記事ではオフショア開発におけるおすすめ企業について解説しています。あわせてご覧ください。
→ オフショア開発会社おすすめ9選|失敗しないためのポイントや活用のメリット・デメリットも – トッパジャパン株式会社
オフショア開発で委託できる業務
オフショア開発で委託できる業務は、単なるシステム開発にとどまらず、運用・保守、テスト、改修など、システムライフサイクル全体にわたります。ここでは、オフショア開発で委託可能な主な業務についてご紹介します。
1. 開発業務
新規システムの開発やアプリケーションの設計・実装は、オフショア開発における最も一般的な委託内容です。要件定義後の詳細設計、フロントエンド・バックエンドの実装、API開発など、幅広い工程に対応できます。
近年では、クラウド環境での構築やモバイルアプリの開発、AI・IoTなどの先端技術領域にも対応するオフショアベンダーが増加しています。
また、以下の記事ではオフショア開発において実績が豊富な会社や選び方のポイントについて解説しています。あわせてご覧ください。
→ 実績豊富なオフショア開発会社5選!国別の費用相場や失敗事例も解説 – トッパジャパン株式会社
2. 運用・保守業務
開発後にシステムを安定稼働させるための運用・保守業務も、オフショア開発で委託可能な業務のひとつです。具体的には、サーバー監視や障害対応、定期的なバックアップ、セキュリティパッチの適用などが含まれます。
オフショア開発では、時差を活かして24時間体制での運用が可能なため、国内では対応が難しい夜間や休日の障害にも対応できます。
3. テスト・検証業務
システムやアプリケーションの品質を担保するためのテスト・検証業務も、オフショア開発で委託できます。テストケースの作成から実施、結果の報告までを一括して任せることが可能です。
トッパジャパンのオフショア開発では、品質検査を専門で行うチームを独立して設置しているため、品質とコスト最適化の両立を重視する企業にも適しています。トッパジャパンへのご相談は、以下のリンクよりお気軽にお問い合わせください。
4. アップデート・改修業務
機能追加やUIの改善、パフォーマンス最適化などのアップデート・改修業務も、オフショア開発で対応できます。既存システムの保守を行いながら、ユーザーニーズや市場の変化に対応するため、継続的な改善を行う体制として活用可能です。
オフショア開発は、特にアジャイル型開発との相性が良く、国内のディレクターと連携することで、スピーディーかつ柔軟な開発体制を構築できます。
また、以下の記事ではベトナムオフショアのアプリ開発についてメリット・デメリットを解説しています。あわせてご覧ください。
→ ベトナムオフショアのアプリ開発におけるメリット・デメリット|失敗しないためのポイントも解説 – トッパジャパン株式会社
オフショア開発で運用・保守を委託する場合の契約形態
オフショア開発で運用・保守業務を委託する際は、業務の性質や管理体制に応じて、適切な契約形態を選択することが重要です。一般的には、準委任契約または請負契約のいずれかが選ばれるケースが多いです。
オフショア開発の契約形態としてよく用いられる準委任契約と請負契約は、業務における責任範囲や成果の定義に明確な違いがあります。
| 契約形態 | 特徴 | 責任範囲 |
|---|---|---|
| 準委任契約 | 業務を時間単位で委託し、特定の成果物の提出を求めない契約 | 委託先は善管注意義務を負うが、成果物の完成責任は負わない |
| 請負契約 | 完成した成果物の納品を目的とする契約 | 委託先が成果物の完成に対して責任を負う |
運用・保守業務のように、内容が変動しやすく、継続的な対応が求められる業務には、準委任契約が適しています。一方で、要件が明確で納品が前提となる業務では、請負契約のほうが適しています。
また、以下の記事ではオフショア開発の国別の価格帯について解説しています。あわせてご覧ください。
→ オフショア開発の国別の価格帯!費用を抑えるコツや国内開発との比較も解説 – トッパジャパン株式会社
オフショア開発で運用・保守を委託するメリット
オフショア開発を活用して運用・保守業務を外部委託することで、さまざまなメリットが得られます。ここでは、特に代表的な3つのメリットを解説します。
1. コスト削減とリソース最適化が実現できる
オフショア開発の最大の魅力のひとつが、人件費の低さによるコスト削減効果です。国内でエンジニアを採用・育成する場合に比べ、同等のスキルを持つ海外エンジニアをより低コストで確保できるため、運用・保守業務にかかる固定費を大幅に削減できます。
また、開発チームや保守チームの人員や稼働時間を必要に応じて柔軟に調整できるため、自社リソースを無理なく最適化し、繁閑差のあるプロジェクトにも柔軟に対応できます。
2. 24時間対応の体制が構築しやすい
オフショア開発では、日本との時差を活かしてチームを配置することで、実質的に24時間稼働できる体制を構築可能です。24時間稼働できる体制を構築することで、日本の業務時間外や夜間に発生した障害やシステムトラブルにもリアルタイムに対応できます。
特に、グローバルサービスやECサイト、業務基幹システムなど、常時稼働が求められるプロジェクトにおいて有効です。
3. 保守業務の標準化・属人化の解消につながる
オフショアに業務を委託する際は、タスクや業務フローを明確に文書化し、マニュアルに基づいて業務を遂行することが求められます。そのため、業務プロセスの標準化が自然に進みやすいというメリットがあります。
結果として、 特定の担当者に依存しない体制を構築でき、人材の入れ替わりや担当変更にも柔軟に対応できる安定した保守体制を構築できます。将来的にも大きな価値をもたらすメリットといえるでしょう。
また、以下の記事ではオフショア開発について詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
→ オフショア開発とは?メリット・デメリットや失敗例・おすすめの開発企業も紹介 – トッパジャパン株式会社
オフショア開発で運用・保守を委託するときの注意点
オフショア開発に運用・保守業務を委託する際は、コストや対応体制のメリットがある一方で、円滑に業務を進めるためには、事前に把握すべきリスクや注意点も存在します。ここでは、代表的な3つの注意点を解説します。
1. 言語・文化の違いによるコミュニケーションロスが起こりうる
日本とオフショア開発先との間では、言語の壁や文化的な価値観の違いによって、仕様の意図が正確に伝わらなかったり、緊急度の認識にズレが生じたりすることがあります。
特に、口頭でのニュアンスや暗黙の了解に依存した指示は、海外チームに伝わりにくく、トラブルの原因になることがあります。通訳や翻訳を担うブリッジSEの配置や、業務内容をマニュアルや図解で明文化するなどの工夫が必要です。
また、以下の記事ではオフショア開発におけるよくある悩みについて解説しています。あわせてご覧ください。
→ オフショア開発でよくある悩みとは?悩み別の対処法や成功事例も紹介 – トッパジャパン株式会社
2. セキュリティ・情報管理のリスクに備える必要がある
運用・保守業務では、機密情報やユーザーデータ、アクセス権限など、セキュリティに関わる情報を扱う場面が多く発生します。そのため、国内とは異なる法律・規制の下で業務を行うオフショア委託先には、情報漏洩リスクへの対策や、アクセス制限の厳格な管理が求められます。
対応策としては、以下のような取り組みが有効です。
- VPNやゼロトラスト環境を活用したセキュアな接続
- ログ管理やアクセス制限の徹底
- 秘密保持契約(NDA)の締結と遵守体制の確認
- ISO27001など情報セキュリティ関連の認証取得状況のチェック
これらの対策を事前に講じることで、セキュリティ事故のリスクを最小限に抑え、安心して長期的な委託体制を構築できます。
3. SLA(サービスレベル合意)の明確化が必要
オフショアに保守業務を委託する際には、SLA(サービスレベル合意)の設定が特に重要です。稼働時間帯や優先度の分類、報告フローなどを曖昧にしたまま契約すると、対応の遅れや品質低下につながる恐れがあります。
SLAでは、以下の内容を締結しましょう。
- 稼働率
- 応答時間
- 解決時間
このほかにも、インシデントの分類や報告頻度・レポートフォーマットの形式なども明確化すべきです。SLAが明確であれば、双方の期待値にズレが生じにくくなり、トラブルの予防につながります。
また、以下の記事ではオフショア開発の失敗例について解説しています。あわせてご覧ください。
→ オフショア開発の失敗事例4選!成功させるポイントや代替案も紹介 – トッパジャパン株式会社
運用・保守にオフショア開発を導入すべきプロジェクトの特徴
オフショア開発はすべてのプロジェクトに適しているわけではなく、業務の内容や体制によって向き・不向きがあります。ここでは、特にオフショアでの保守委託と相性の良いプロジェクトの特徴をご紹介します。
1. 長期的な運用を前提としている
システムやサービスを数年単位で継続的に運用することを前提としたプロジェクトは、オフショア開発との相性が非常に良いです。初期コストを抑えながら、海外リソースによって安定した保守体制を長期的に確保できるため、人件費の最適化と継続的な改善・保守を実現できます。
SaaS型サービスや業務基幹システム、ECプラットフォームなどが代表的な例です。
2. 夜間・休日の対応が求められる
ユーザーが24時間利用するサービスや、業務を止められない企業システムでは、営業時間外のトラブルにも迅速に対応できる体制が求められます。こうした場合には、オフショア拠点の活用によって、夜間や休日のインシデントにも対応可能な24時間体制の構築がしやすくなります。
その結果、ダウンタイムの短縮や顧客満足度の向上にもつながります。
3. 保守作業が定型化・マニュアル化されている
作業内容が標準化され、マニュアルに沿って進められる業務は、オフショア開発に非常に適しています。再現性の高いタスクは、言語や文化の違いを越えて伝えやすいため、外部に委託しても品質低下の恐れはほぼないでしょう。
作業フローや判断基準をあらかじめドキュメント化しておくことで、業務の属人化防止とよりスムーズな運用が実現できます。
また、以下の記事ではベトナムでのオフショア開発について解説しています。あわせてご覧ください。
→ オフショア開発にはベトナムが最適!おすすめの開発会社や失敗しないポイントも – トッパジャパン株式会社
オフショア開発の依頼企業を選ぶときのポイント
オフショア委託の成否を左右するのが、委託先の選定です。単にコストが低いという理由で選ぶのではなく、業務内容に合った体制・実績・信頼性を備えたパートナーを選びましょう。
ここでは、オフショア開発の委託先を選ぶポイントを3つご紹介します。
1. 運用・保守のサポート実績が豊富
保守業務には開発とは異なる専門性が求められるため、運用・保守対応の実績があるかどうかは、必ず確認すべきポイントです。対応実績のある業種やプロジェクトの規模・期間、障害発生時の対応履歴などを確認しましょう。
また、SLAへの対応状況や夜間シフトへの対応実績なども、比較検討すべき要素です。
2. コミュニケーションのサポート体制が整っている
オフショア開発では、ブリッジSEの配置や日本語対応体制の有無が、業務のスムーズな進行に直結します。プロジェクトマネージャーやリーダーがどの程度日本語で対応できるか、時差を考慮した定例ミーティングが可能かどうかも重要な判断軸です。
文化や働き方の違いによるギャップを埋めるためにも、翻訳体制の整備やツールの活用状況を確認しておくと安心です。
3. セキュリティ対策・情報管理体制が整っている
機密情報の取扱いやアクセス制御の体制について、事前に確認しておく必要があります。ISO27001などの国際認証の取得状況、VPNやログ管理体制、物理的なセキュリティ環境などの確認は不可欠です。
また、秘密保持契約(NDA)の締結や、情報漏洩時の対応フローについても、契約前に明確にしておくことが重要です。
まとめ
オフショア開発を活用した運用・保守業務の委託は、コスト削減・24時間対応・業務標準化など、企業にとって多くのメリットがあります。一方で、言語や文化の違い、セキュリティ面の懸念、SLAの曖昧さといった課題もあるため、事前準備と適切なパートナー選定が成功の鍵となります。
特に、長期運用を前提としたシステムや、夜間対応が必要なサービス、作業がマニュアル化されているプロジェクトなどは、オフショア開発と非常に相性が良いといえるでしょう。
トッパジャパンでは、運用・保守に特化したオフショア体制を整備し、日本語対応・セキュリティ対策・SLA対応まで万全の支援体制をご用意しています。オフショア導入をご検討の際は、ぜひお気軽にご相談ください。
この記事の著者
- ベトナムの優秀な開発チームによるオフショア開発サービスを提供している開発会社。国内基準のコミュニケーション・品質・対応を重視し、幅広いスキルを持つエンジニアが高品質で安心な開発を実現。柔軟性とコストパフォーマンスを両立したサービスで、お客様のニーズにお応えしています。
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