
オフショア開発を導入する際、提携企業との契約が生じます。しかし、契約書の種類や締結までの流れがわからず、悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
本記事では、オフショア開発の契約の種類や契約書締結の流れ、契約を結ぶ際の注意点を紹介します。オフショア開発の導入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
オフショア開発の契約とは?
オフショア開発における契約とは、海外の開発会社に直接システム開発を依頼する場合や、オフショア開発支援を行っている日本企業を通じて海外に開発業務を委託する場合に締結される契約のことを指します。契約形態は、プロジェクトの目的や規模、進行方法に応じて異なり、一般的に「準委任契約」「ラボ契約」「請負契約」の3種類に分類されます。
それぞれにメリット・デメリットがあるため、自社のニーズに応じて最適な契約を選ぶことが重要です。以下では、それぞれの契約形態の特徴と、適しているケースについて解説します。
準委任契約
準委任契約は、成果物ではなく「業務の遂行」に対して報酬を支払う契約形態です。発注側が業務内容を指示し、受注側がそれに従って開発や検証などを行います。
| メリット | 柔軟に業務内容を変更できる業務プロセスに合わせた継続的な対応が可能アジャイル開発や保守・運用業務との親和性が高い |
| デメリット | 進捗管理や品質担保は発注側の責任になる指示内容が曖昧だと手戻りや非効率が発生しやすい作業報告が不十分だと、稼働の可視化が難しくなる |
このような特徴から、準委任契約は要件が定まっていない初期フェーズの開発やアジャイル型で進めるプロジェクト、継続的な保守・運用やテスト作業などに向いているといえます。
また、以下の記事ではベトナムでのオフショア開発について解説しています。あわせてご覧ください。
→ オフショア開発にはベトナムが最適!おすすめの開発会社や失敗しないポイントも – トッパジャパン株式会社
ラボ契約
ラボ契約とは、オフショア開発会社が一定期間、専属のエンジニアチームを編成し、発注側の指示に基づいて柔軟に開発業務を行う契約形態であり、法的には準委任契約の一種です。月単位でチームの稼働時間を確保する、チーム専属型(貸し切り型)の契約ともいえます。
| メリット | 社内メンバーのように柔軟な指示が可能長期的な開発や継続的な改善施策に適しているアジャイル開発と相性が良いナレッジが蓄積しやすく、属人化を防ぎやすい |
| デメリット | 成果物保証がない稼働が少ない月でも一定の固定コストが発生する開発の質やスピードがメンバーのスキルに依存する |
このような特徴から、ラボ型開発は中長期で継続するサービス開発や、自社主導で柔軟な対応が求められるプロジェクトが向いているといえます。
また、以下の記事ではオフショア開発におけるおすすめ企業について解説しています。あわせてご覧ください。
→ オフショア開発会社おすすめ9選|失敗しないためのポイントや活用のメリット・デメリットも – トッパジャパン株式会社
請負契約
請負契約は、開発会社が成果物を納品する義務を負う契約です。納期・成果物・品質・仕様などが明確に定められ、納品と同時に報酬が発生するのが一般的です。
| メリット | 完成責任が開発側にあるため、発注側の負担が軽減される契約時に費用・納期が明確になるため、予算管理がしやすい品質や進捗を契約ベースで管理しやすい |
| デメリット | 追加費用や納期遅延が生じやすい柔軟な対応がしにくい要件定義を発注側が明確に固めておく必要がある |
このような特徴から、請負契約はスコープが明確なプロジェクトや、短期集中で開発する業務システム・Webアプリ開発、完成した成果物を一括で納品してもらいたいケースに向いています。
また、以下の記事ではオフショア開発において実績が豊富な会社や選び方のポイントについて解説しています。あわせてご覧ください。
→ 実績豊富なオフショア開発会社5選!国別の費用相場や失敗事例も解説 – トッパジャパン株式会社
オフショア開発の契約書締結までの流れ
オフショア開発を始めるにあたっては、契約締結までのプロセスを丁寧に踏むことが非常に重要です。契約内容が不明確なまま進行すると、開発途中でトラブルに発展するリスクがあります。
契約の進め方は企業や案件の規模によって前後する場合もありますが、ここでは、オフショア開発でよく採用される一般的な契約締結までの流れを3つのステップに分けて解説します。
1. 希望要件・仕様に関するヒアリング
まず最初のステップは、開発会社からのヒアリングです。ここでは、自社が実現したい内容や開発の目的、希望する納期、予算の範囲などを共有し、開発会社の理解を深めてもらいます。
この段階での認識のズレが、後の仕様変更や追加費用の原因となるため、認識のすり合わせが非常に重要です。エンジニア側と共通の技術用語や表現でやりとりできるよう、担当者がある程度のIT知識を持っていると、やり取りもスムーズに進みます。
また、以下の記事ではオフショア開発について詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
→ オフショア開発とは?メリット・デメリットや失敗例・おすすめの開発企業も紹介 – トッパジャパン株式会社
2. NDAおよび基本契約の締結
ヒアリングで方向性が固まった後は、正式な契約に向けての前準備として、秘密保持契約(NDA)を締結します。NDAとは、契約や業務の過程で知り得たビジネス情報や顧客データを外部に漏らさないことを法的に約束するものであり、信頼関係を築くうえでも欠かせないステップです。
NDAに加えて、基本契約書の締結が行われる場合もあります。基本契約書では、個別の開発案件に入る前に、両社間の基本的な取引ルール(契約期間、著作権の帰属、損害賠償の責任範囲、契約解除の条件など)を定めます。
この段階を丁寧に踏むことで、プロジェクト全体のリスクを最小限に抑えることができます。
3. 見積もり・契約の締結
秘密保持契約と基本契約を締結した後、開発会社から正式な見積書や提案書が提示されます。費用の妥当性、開発スケジュール、成果物の定義、支払い条件などを細かく確認します。
その後の契約締結で、プロジェクトの性質に応じて、請負契約・準委任契約・ラボ契約などの契約形態を選択します。契約書には、作業範囲や納品物の内容、品質保証の取り扱い、トラブル時の対応方針などが明記されます。契約内容が不明確なまま開発がスタートすると、後の工程で認識のずれが発生し、納期遅延やコストの追加につながるおそれがあるため、このタイミングでの確認が極めて重要です。
また、以下の記事ではオフショア開発の失敗例について解説しています。あわせてご覧ください。
→ オフショア開発の失敗事例4選!成功させるポイントや代替案も紹介 – トッパジャパン株式会社
オフショア開発の契約を締結するときの注意点
オフショア開発では、国境を越えて契約を交わすため、日本国内の委託とは異なる視点でのリスク管理が求められます。契約書の取り決めが曖昧だと、トラブル発生時に迅速な対応ができず、ビジネスに悪影響を及ぼす可能性があります。
ここでは、契約締結時に押さえておくべき4つのポイントを解説します。
1. 契約書の言語と準拠法・裁判管轄を明確にする
オフショア契約では、契約書の言語に加え、万が一紛争が発生した場合にどの国の法律を適用するか(準拠法)、どの国・地域の裁判所が管轄するか(裁判管轄)を明記することが極めて重要です。
たとえば、契約書が英語で作成されていても、日本法を準拠法として定めることで、日本企業にとって有利な条件で交渉を進めることが可能になります。一方で、こうした取り決めがない場合は、相手国の法制度に従って裁かれる可能性があり、予期せぬ不利な判断を受けるリスクがあるため注意が必要です。
その点、オフショア開発を提供しているトッパジャパンは日本法人であるため、海外企業との複雑な手続きは不要です。
オフショア開発の国別の価格帯については、以下の記事で解説しています。あわせてご覧ください。
→ オフショア開発の国別の価格帯!費用を抑えるコツや国内開発との比較も解説 – トッパジャパン株式会社
2. 知的財産権や成果物の権利帰属を明文化する
開発によって生じた成果物の帰属先や、それに関連する著作権・使用権の取り扱いについては、あらかじめ明文化し、合意しておく必要があります。特に、ソースコード・設計資料・UIデザインなどの所有権や利用範囲については、契約書に明記しておくべき重要な事項です。
知的財産に関する取り決めが不十分なまま契約を締結すると、将来的に他の開発会社への業務引き継ぎや、自社サービスへの活用が困難になる恐れがあります。万が一の権利侵害を防ぐためにも、曖昧さのない明確な契約条項を整備しましょう。
3. 品質保証の範囲を確認する
品質基準や瑕疵(かし)対応に関する条件を、あらかじめ明確に取り決めておくことが不可欠です。修正対応期間(保証期間)、対応範囲、重大障害時の連絡手段、再発防止策などを契約に明記しておくことで、トラブル時の混乱を回避できます。
保証の有無とその具体的な内容は、事前に十分確認しておくべき重要なポイントです。
また、以下の記事ではオフショア開発におけるよくある悩みについて解説しています。あわせてご覧ください。
→ オフショア開発でよくある悩みとは?悩み別の対処法や成功事例も紹介 – トッパジャパン株式会社
4. コミュニケーション体制と責任分担を明確にする
開発拠点が海外にあるオフショア開発では、時差や文化の違いにより、情報伝達や意思決定が遅れることも少なくありません。連絡手段、会議の頻度、報告形式、緊急時の連絡体制などを契約時に取り決めておくことが効果的です。
また、各フェーズの責任範囲、承認フロー、担当者の権限などを明確にすることで、認識の齟齬や作業漏れを未然に防ぐことができます。特に「誰が・いつ・何を判断するのか」が曖昧なまま進めてしまうと、プロジェクト全体が迷走する恐れがあるため、明確な体制設計が極めて重要です。
また、以下の記事ではベトナムオフショアのアプリ開発におけるメリット・デメリットについて解説しています。あわせてご覧ください。
→ ベトナムオフショアのアプリ開発におけるメリット・デメリット|失敗しないためのポイントも解説 – トッパジャパン株式会社
まとめ
オフショア開発の契約は、プロジェクトの特徴や開発期間に合わせて選ぶ必要があります。自社のプロジェクトに最適な方法は何か、十分に検討してから契約を結びましょう。
また、オフショア開発の契約を結ぶ際は、提携企業との齟齬が生じないように注意が必要です。事前に契約内容を十分に検討し、コミュニケーションを重ねて契約を締結することが重要です。
トッパジャパンでは品質とコストパフォーマンスを両立させたオフショア開発を提供しています。オフショア開発の導入を検討している方は、ぜひお問い合わせください。
この記事の著者
- ベトナムの優秀な開発チームによるオフショア開発サービスを提供している開発会社。国内基準のコミュニケーション・品質・対応を重視し、幅広いスキルを持つエンジニアが高品質で安心な開発を実現。柔軟性とコストパフォーマンスを両立したサービスで、お客様のニーズにお応えしています。
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