
オフショア開発を進める際、システムの品質やコミュニケーションだけに意識が向きがちですが、実は著作権の取り扱いも非常に重要なポイントです。ソースコード・設計書・UIデザインなど、開発によって生まれる成果物の多くは著作物に該当し、その権利の帰属先によって、納品後の改修や再利用の自由度が大きく変わります。
特に海外企業との開発では、日本とは異なる著作権法や契約慣習が存在するため、契約内容の不備が原因でトラブルに発展するケースも少なくありません。
本記事では、オフショア開発における著作権の扱いや注意点を紹介します。オフショア開発の利用を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
システム開発における著作権とは
システム開発における著作権とは、ソフトウェアやプログラムを創作した人に自動的に発生する権利のことを指します。著作権には、ソースコードだけでなく、設計書・UIデザイン・ドキュメント類など、創作性のある成果物がすべて含まれます。
多くの国では著作権が自動的に発生するため、、特別な登録手続きは不要です。逆に言えば、契約書で明確に定めていない場合、著作権は開発者側に残ったままになることがあり、これがトラブルの原因となります。
開発したシステムの著作権の帰属先は、契約内容によって決まります。一般的には、以下の2つのパターンがあります。
- 1. 開発会社(制作側)に著作権が帰属するパターン
- 2. 発注企業(依頼側)に著作権を譲渡するパターン
契約で著作権譲渡が定められていない場合、原則として著作権は開発会社側に残ります。著作権が開発会社に帰属した状態だと、発注企業が自由に改修・再利用・二次開発を行えず、契約し直しや追加費用が発生するリスクなどがあります。
著作権トラブルを防ぐために、契約書に以下のポイントを明示することが一般的です。
- ・著作権(経済的権利)の譲渡
- ・著作者人格権の不行使
- ・ソースコードや設計書を含む成果物の範囲
- ・再委託先を含む権利処理(譲渡・ライセンスの取得)の義務
特にオフショア開発では、各国で著作者人格権の扱いや契約の慣習が異なるため、日本基準の認識で進めるとトラブルが起きやすくなります。開発したシステムを自社の資産として安心して活用するためにも、著作権の帰属と権利範囲を最初から明確にすることが欠かせません。
また、以下の記事ではオフショア開発について詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
→ オフショア開発とは?メリット・デメリットや失敗例・おすすめの開発企業も紹介 – トッパジャパン株式会社
オフショア開発で著作権トラブルが起こりやすい理由
国内での開発に比べて、オフショア開発は著作権トラブルが起こりやすいとされています。ここでは、オフショア開発で著作権トラブルが起こりやすい理由を解説します。
理由1. 成果物の著作権が自社に帰属しないケースがある
システム開発では、契約書に著作権の帰属先を明記していない場合、著作権は原則として開発者側に残ります。これは日本法でも同様であり、オフショア開発でも基本的な考え方は変わりません。
そのため、発注企業が自社のものだと思っていても、契約に記載がなければ成果物の著作権は自社に移転していない可能性があります。
著作権が開発会社側にある場合、以下のようなリスクが発生する恐れがあります。
- ・別のベンダーにソースコードを渡して改修するには追加の許諾や費用がかかる
- ・システムの改変・再利用に制限がかかる
- ・追加開発のたびに開発会社に依存する
オフショア開発では、著作権に対する認識のズレが原因で納品後に揉めるケースが非常に多く見られます。認識のすり合わせと、契約書に著作権の帰属先を明記することが重要です。
理由2. 著作権が未移転のまま納品される
オフショア開発における典型的なトラブルが、成果物の著作権が移転しないまま納品されてしまうケースです。
これらのトラブルは、以下のような原因で発生します。
- ・著作権譲渡の条文が契約書に入っていない
- ・条文があっても翻訳の解釈違いがある
- ・納品のタイミングで権利が移転するのか、支払い後なのかが明記されていない
特に東南アジアの一部の国では、著作者人格権の扱いや譲渡条件が国によって強く保護される傾向があります。そのため、日本と同じ感覚で契約を締結してしまうと、納品後に思わぬ制約が生じることがあります。
理由3. 国ごとの法律の違いにより認識の齟齬が生じる
オフショア開発が国内開発以上に複雑になる理由は、国ごとに著作権法・契約慣習・権利の保護レベルが異なる点にあります。
具体的には、以下のような点で違いがあります。
- ・著作者人格権が強く保護され、放棄が認められない国
- ・契約書より“実際の開発行為”を優先して判断する国
- ・権利譲渡に厳格な書面手続きが必要な国
このような違いによって、以下のようなトラブルが発生することがあります。
- ・日本では通用する契約文言が国外では譲渡の成立要件を満たさないことがある
- ・著作権譲渡の解釈が国ごとに異なり、完全譲渡にならない
- ・再委託先が別法令に従って開発し、権利処理が複雑化する
発注側が日本国内の基準で契約を作成してしまうと、海外側の法規や慣習と噛み合わず、納品後の権利トラブルにつながりやすくなります。
また、以下の記事ではオフショア開発におけるコミュニケーションの重要性について解説しています。あわせてご覧ください。
→ オフショア開発のコミュニケーション課題と解決策|円滑なやりとりを実現する5つの方法 – トッパジャパン株式会社
国別に注意すべき著作権・契約上のリスク
オフショア開発では、国によって著作権の考え方や契約慣習が大きく異なります。日本では当然とされる取り決めが海外では通用せず、トラブルに発展するケースも珍しくありません。
ここでは、オフショア開発で依頼が多い ベトナム・中国・インド の3カ国について、特に注意すべき著作権・契約上のリスクを整理します。
ベトナム|著作者人格権の扱いが強く主張されやすい
ベトナムでは、著作権法で著作者人格権(同一性保持権・氏名表示権など)を非常に強く保護しています。人格権は譲渡できないため、以下のようなトラブルが起きやすくなります。
- ・改修時に反対を申し入れられる
- ・仕様変更やUI変更に制約がかかる
- ・再利用や別プロダクトへの転用で問題になる
日本企業が見落としやすいのは、著作権を譲渡しても人格権は残るという点です。対策として、契約書に著作者人格権を行使しない旨を明記し、開発者本人・再委託先も含めた同意を得ておくことが重要です。
また、以下の記事ではベトナムでのオフショア開発について解説しています。あわせてご覧ください。
→ オフショア開発にはベトナムが最適!おすすめの開発会社や失敗しないポイントも – トッパジャパン株式会社
中国|成果物の著作権帰属が曖昧になりやすい
中国のオフショア開発では、成果物の著作権がどちらに帰属するのか曖昧なまま契約が進んでしまうケースが多く見られます。
このような事態に陥る背景として、以下のような要因が考えられます。
- ・中国の開発会社が標準契約で著作権は自社に帰属するものとしている
- ・契約よりも実際の開発行為を重視する文化が残っている
- ・再委託が多層化しやすく、著作権処理が追跡しにくい
このような事情から、成果物が発注企業に完全移転していない事態が起こりやすくなっているのです。
その結果、以下のような問題を引き起こすことがあります。
- ・別ベンダーへの乗り換えができない
- ・二次利用や複製・改変に制限がかかる
- ・ソースコードの一部が再委託先に残ってしまう
対策としては、契約段階で著作権の帰属先の明記・再委託範囲の制限・全ての成果物の納品義務を厳格に取り決めることが不可欠です。
インド|著作権のライセンス・帰属条項が厳密にチェックされる
インドはIT大国であり、契約や著作権の取り扱いが非常に厳格です。特に著作権の帰属・ライセンス・利用範囲の条項を細かく精査する文化が強く、曖昧な文言では契約が成立しないこともあります。
よくあるリスクは以下のとおりです。
- ・譲渡なのかライセンス付与なのか曖昧な契約が通用しない
- ・使用範囲(地域・用途・期間)を詳細に定めないと無効扱いになる
- ・改修権や二次利用権の範囲をめぐって交渉が長引く
- ・OSS(オープンソース)の扱いに敏感で、責任範囲の明確化が必須
特に、インドでは 権利譲渡には明確な文言が求められ、日本の一般的な請負契約のテンプレートでは不十分なことが多々あります。
そのため、発注側は契約書に以下のポイントを詳細に明示することが重要です。
- ・著作権の帰属条件
- ・人格権の取り扱い
- ・利用範囲(改変・複製・再利用など)
- ・再委託先への権利処理の義務
法務レビューを行ったうえで締結することが重要です。
オフショア開発における著作権トラブルを防ぐためのポイント
オフショア開発では、契約内容のわずかな曖昧さが大きな著作権トラブルにつながります。ここでは、オフショア開発における著作権トラブルを防ぐためのポイントを紹介します。
1. 著作権の帰属先を明確に定義する
オフショア開発では、成果物の著作権を誰に帰属させるのかを契約書で明確にしておくことが非常に重要です。契約書に記載がない場合、著作権は開発者側に残るのが原則であり、発注企業が当然のように自由に利用できるわけではありません。
納品時に移転するのか、支払い完了後なのか、またソースコードや設計書、マニュアルなど成果物ごとの扱いをどこまで含めるのかといった点まで具体的に定めておく必要があります。特にオフショア開発では各国で著作権の扱いが異なるため、より厳密な記述が求められます。
2. 再委託先への著作権処理を義務化する
オフショア開発では、一次委託先がさらに外部の企業やフリーランスへ作業を再委託するケースが少なくありません。ここで問題になるのが、再委託先で作られた成果物の著作権処理が適切に行われていない場合、権利が別の開発者に残ってしまうリスクです。
権利の所在が明確でない場合、発注企業が自由にシステムを利用できなくなる可能性があります。こうした事態を避けるためには、最終的な成果物の権利関係について一次委託先が責任を負う体制を整えておくことが重要です。
オフショア開発における法律についての注意点
オフショア開発では、著作権に限らず、制作にまつわるさまざまな法律について正しく理解しておく必要があります。ここでは、オフショア開発における法律の注意点を紹介します。
1. 依頼する国ごとに準拠する法律や管轄が異なる
オフショア開発では、契約で定める準拠法と管轄裁判所が非常に重要です。
日本企業同士の契約であれば、当然のように日本法が適用され、トラブルが発生した際は日本の裁判所で争うことが前提になります。しかし海外企業との契約では、相手国の法律が適用されるケースも多く、紛争が起きた場合には現地の裁判所で解決しなければならない可能性があるのです。
著作権・契約違反・損害賠償などのトラブルは、準拠法によって判断基準が大きく異なります。日本では通用する契約文言が海外では効力を持たないこともあるため、契約締結前にどの国の法律で判断するのか、紛争時の裁判の管轄はどこかを明確にすることが重要です。
2. 雇用契約書の言語や文化の違いによる認識の齟齬が発生しやすい
オフショア開発でよく問題になるのが、言語や文化の違いによって契約内容の解釈にズレが生じる点です。英語で契約書を作成する場合、ひとつの単語の解釈が異なったり、曖昧な表現や慣習的な合意が通用しなかったりするケースがあります。
また、開発メンバーが頻繁に入れ替わる国も多く、雇用契約の内容が日本とは大きく異なることも考えられます。雇用形態や勤務形態の認識にズレがあると、スケジュール管理や品質管理にも影響が及ぶため注意が必要です。
こうしたリスクを避けるためには、契約書の文言を明確に統一し、レビュー時には意図が正しく伝わっているかを丁寧に確認することが欠かせません。
3. 輸出管理の徹底が欠かせない
オフショア開発を行う場合、日本企業は外国に対して技術を提供することになるため、輸出管理(外為法・安全保障輸出管理)の対象となる場合があります。特に高度な技術や暗号化技術、通信技術などを扱うプロジェクトでは、技術情報を海外に提供するだけで輸出扱いとなるケースがあります。
輸出管理を怠ると、発注側が行政指導や罰則の対象になる恐れがあり、法務リスクとしては非常に大きなポイントです。そのため、技術仕様書・コード・ドキュメントの提供が規制対象に該当するかどうかを事前に確認し、必要に応じて経済産業省のガイドラインを踏まえた管理体制を整えましょう。
さらに、開発拠点が複数の国にまたがる場合、どの国に情報が提供されるかによっても扱いが変わるため、プロジェクト開始前に必ず確認すべき項目です。
まとめ
今回は、オフショア開発における著作権について紹介しました。一見、システム開発やオフショア開発とは関係がないように思える著作権ですが、スムーズな開発・運用を実現するには、著作権法を遵守し、丁寧に取り扱うことが重要です。
特に海外企業と協業して開発を進めるオフショア開発では、国ごとに異なる法規制に対応しなければなりません。プロジェクト開始後のトラブルを防ぐためにも、著作権をはじめとする各種法律の取り扱いには十分に注意しましょう。
また、オフショア開発の利用を検討している場合は、ぜひトッパジャパンにご相談ください。トッパジャパンは、長年協業体制を取ってきた経験豊富なベトナムの開発チームと提携するため、法律の扱いやプロジェクト進行中の予期せぬトラブルにも問題なく対応できます。お客様のニーズに合わせて、柔軟なサポート体制を構築しているため、オフショア開発の利用を検討しているなら、まずはお気軽にご相談ください。
この記事の著者
- 教育系・製造業のシステム開発・AI開発に強い開発会社「トッパジャパン」の代表取締役社長。現場密着のサポート体制や、豊富な実績・経験からをもとにした幅広い対応力、国内外で実績を積んだ優秀なメンバーによる高いコストパフォーマンスで、お客様のニーズにお応えしています。
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