
GIGAスクール構想の進展に伴い、教育現場のデジタル化が急速に進む今、教育系システムの開発会社の選定は教育機関にとって重要な課題となっています。
本記事では、教育系メーカーが注力するハードウェア、ソフトウェア、EdTech領域の最新動向を解説した上で、教育系システムの開発実績が豊富な開発会社5社を厳選して紹介します。
さらに、開発会社選びの5つのポイントとして、開発実績、コミュニケーション体制、セキュリティ対応、予算・納期の柔軟性、サポート・運用支援体制について具体的なチェック項目をご紹介します。
教育機関の管理者や情報システム担当者の方々は、本記事を参考に自校の特性やニーズに合った最適な開発パートナーを見つけ、効果的な教育システム構築を実現してください。
目次
教育系メーカーが注力する主な領域

GIGAスクール構想の推進によって1人1台端末を持つ環境が整備され、デジタル教科書の本格導入も控える中、教育系メーカーはさまざまな領域で革新的な製品やサービスの開発に注力しています。本章では、教育系メーカーが特に力を入れている3つの領域について解説します。
従来の教室環境を支えるハードウェア、学習・指導を効率化するソフトウェア、そして先端技術を活用したEdTechの最新動向を理解しておきましょう。
ハードウェア系
教育現場のデジタル化を支えるハードウェア製品は、物理的な学習環境を構築するうえで欠かせない要素です。
【教育向けハードウェアの主要製品】
- 電子黒板(デジタル黒板):授業の中心的ツールに
- 学習者用デバイス:児童生徒1人1台にタブレットPCやノートPC
- 教育用ロボット:プログラミング教育の必修化で需要増加
- 実験・観察機器:デジタル顕微鏡やセンサー類
- 特別支援教育向け機器:障がいに応じた支援機器
電子黒板は、GIGAスクール構想により各教室に配備された児童生徒用端末と連携して、授業資料の提示や生徒作品の共有、オンライン授業への活用など、現代の授業に不可欠なツールになりつつあります。
また、2024年度以降は「Next GIGA」と呼ばれる次期フェーズが始まり、GIGAスクールで配布された学習者用デバイスの更新需要が本格化する見込みです。各メーカーは端末更新に留まらず、Google Classroomなど教育プラットフォームと連動し直感的に操作できる新世代機器の開発に注力しています。
ソフトウェア系
教育現場のDXを支えるソフトウェア製品は、学習管理から教材作成、評価まで幅広い領域をカバーしています。コロナ禍でのオンライン授業の普及もあり、教育ソフトウェアの需要は急速に拡大しています。
【教育向けソフトウェアの主要分野】
- 学習管理システム(LMS):課題配信や進捗管理を効率化
- 教材作成ツール:デジタル教材を簡単に作成・共有
- デジタル教科書:2024年度から紙の教科書と併用しながら段階的に活用が進む
- 校務支援システム:出欠管理や成績処理などの業務効率化
- 学習分析ツール:生徒のデータを収集・分析し指導に活用
学習管理システム(LMS)は教育ソフトウェアの中核を担っており、Google ClassroomやMicrosoft Teams、Canvas、Moodleなどが広く利用されています。
LMSを活用することで課題の提示・回収、進捗状況の把握、生徒間の協働学習などをオンライン上で効率的に行えるようになり、従来の紙や板書主体の授業からデジタル教材・クラウド活用型の授業への移行が進んでいます。
EdTech(ICT教育)領域
EdTech(Education × Technology)領域では、先端技術を活用した教育ソリューションが次々と生まれています。特にAI、VR、そして生成AIの教育活用は、学びの可能性を大きく広げる注目分野です。
【EdTechの主要技術と活用分野】
- AI・生成AI:個別最適化学習、教師業務支援
- VR・メタバース:体験型学習、遠隔教育の質向上
- オンライン学習プラットフォーム:時間・場所を超えた学習
- 適応学習システム:個々の理解度に合わせた教材提供
- データ分析:学習記録の可視化と教育改善
オンライン学習プラットフォームは、インターネットを通じて授業動画や教材を配信し、生徒が自宅からでも学べるサービスとして発展しています。
コロナ禍以降は自宅学習支援のニーズが高まり、従来は対面が中心だった学習塾や学校補習もオンライン併用が一般化しました。ベネッセやZ会などの教育業界の大手企業も映像授業やAI問題演習を組み合わせたオンライン講座を展開し、地理的制約を超えた学習環境の整備が実現しています。
教育系システムの開発会社5選
本章では、教育系システム開発に強みを持つ5社をピックアップし、それぞれの特徴や得意分野、導入事例を紹介します。
- トッパジャパン株式会社
- エスエイティーティー株式会社
- 株式会社カオピーズ
- 株式会社ビナヤマト
- 株式会社ジャスウィル
各社の強みを理解し、予算やニーズに合った最適なパートナー選びの参考にしていただければ幸いです。
トッパジャパン株式会社

出典:トッパジャパン株式会社
トッパジャパン株式会社は、ベトナムの開発チームを活用したオフショア開発サービスを提供する企業です。高い技術力と日本人エンジニアによる品質管理体制で、数多くの教育関連事業における開発実績がございます。
【会社概要】
- 所在地:千葉県市原市
- 強み:教育メーカーへのアプリ開発実績やGIGAタブレットの導入実績、教育系DX開発の実績が豊富(ICT支援員の派遣実績もあり)
- 特色:オフショア開発による高いコストパフォーマンス
教育機関向けの代表的な開発事例として、大学のオンプレミス環境からクラウドへの移行プロジェクトが挙げられます。経費削減を目的としたシステムのクラウド化において、セキュリティ確保のため国内外クラウドサービスを併用する必要がありました。
トッパジャパンはこの課題に対し、クラウド環境の利点を最大限に活かした設計を実施。同時に情報共有や業務自動化のツール開発も並行して行うことで、当初目標を上回るコスト削減を実現しました。
削減できた予算は学生募集戦略など本来の業務に再配分され、大学の経営効率化に大きく貢献しています。教育機関特有のニーズを理解し、コスト削減と業務効率化を両立する柔軟なシステム開発で、各教育機関の状況に応じたソリューションを提供している点が同社の強みです。
エスエイティーティー株式会社

エスエイティーティー株式会社(SATT)は、駿台グループに属する1986年設立のITラーニング専門企業で、教育とITの融合に特化した実績豊富な企業です。
【会社概要】
- 所在地:東京都千代田区(水道橋)
- 強み:教育×IT分野での長年の実績
- 特色:教育機関向けシステム開発と教材制作の一体提供
- 主力製品:学習管理システム「学び~と」、医療系教育向け「ESS」
SATTは教育機関のICT活用を総合的に支援する企業として、コンサルティングからシステム開発、教材制作まで一貫してサービスを提供しています。駿台予備校で培った教育ノウハウと最新技術を融合させ、学校向け校務支援システムやeラーニング教材を通じて教職員の業務効率化と学習効果の向上に貢献しています。
代表的な開発事例として、医療系大学・専門学校向けの教育支援システム「ESS」の導入があります。兵庫県の姫路大学では、ESSの導入により学生の学習状況をリアルタイムで可視化し、支援が必要な学生を早期に発見・対応できるようになりました。詳細な学習データから各学生の弱点も把握できるようになり、個別指導の質が向上しています。
株式会社カオピーズ

出典:株式会社カオピーズ
株式会社カオピーズは、2014年に設立されたベトナム発のIT企業で、教育分野にも力を入れています。
【会社概要】
- 所在地:ベトナム・ハノイ(本社)、東京都豊島区(日本オフィス)
- 強み:AI・画像認識技術を活用した教育システム開発
- 特色:「柔軟性」「創造性」「安心・信頼性」を重視した開発
- 社員規模:約460名(2024年時点)
カオピーズは教育現場の煩雑な業務を簡素化するシステム開発に強みを持ち、辞書・学習アプリ、出席・成績管理システムなど多様な教育向けソリューションを提供しています。
開発事例として特筆すべきは、AI・OCR技術を活用した試験採点システムです。模範解答と生徒の提出レポートをOCRで自動読み取りし、AIで照合・採点を行うことで、教職員の採点業務の生産性を飛躍的に向上させました。
株式会社ビナヤマト

出典:株式会社ビナヤマト
株式会社ビナヤマトは、クラウド技術を活用した教育システム開発を得意とする企業です。
【会社概要】
- 所在地:愛知県名古屋市
- 強み:クラウド型LMSの開発・提供
- 主力製品:クラウド型eラーニングシステム「EduCross」シリーズ
ビナヤマトは2009年に現体制となり、日本側で要件定義・設計・品質管理を行い、ベトナム側グループ会社で実装を担当する協業モデルにより、スピーディーかつ高品質な開発を実現しています。
主力製品のクラウド型LMS「EduCross」は、民間の塾や語学スクールでも手軽に導入できる低コストのEラーニング基盤として注目されています。
初期費用0円・月額300円から利用可能なクラウドサービスで、小規模な学習塾でも利用しやすい価格設定が特徴です。PCはもちろんスマートフォンからのアクセスにも最適化されており、生徒は場所や時間を問わず教材に取り組むことができます。
株式会社ジャスウィル

出典:株式会社ジャスウィル
株式会社ジャスウィルは、大学向けシステム開発およびパッケージソフトの開発・販売を主力とする企業です。
【会社概要】
- 設立:2004年5月
- 所在地:愛知県名古屋市
- 強み:大学業務システムに特化した開発実績
- 主力製品:「TriR Campus」シリーズ
ジャスウィルは「現場の業務効率化」と「学生サービス向上」をキーワードに、大学向けパッケージソフト「TriR Campus」シリーズを展開。入試・学籍管理、履修成績、シラバス、施設予約、アンケートなど大学業務全般をカバーするソリューションを提供しています。
代表的な開発事例として、同志社女子大学への施設予約システム導入があります。従来は学内の教室や施設の予約を部署ごとに予約・申請書類の提出が必要なうえ、全学的な施設管理部署に書類を回し手配をするという多重管理で、非効率な運用体制でした。
ジャスウィルの施設予約システムを導入した結果、複数部署間で予約状況を可視化し、一元管理を実現。申請や承認にかかる時間も劇的に効率化されました。また、年間数千時間規模の作業削減を実現し、予約業務に伴う印刷物も大幅に減らすことに成功しています。
教育系システムの開発会社の選び方

教育現場に適したシステム開発会社を選ぶには、複数の視点から総合的に判断することが重要です。
- 開発実績・事例の有無
- コミュニケーション体制・技術力
- セキュリティ・個人情報保護の対応レベル
- 予算・納期の柔軟性
- サポート・運用支援体制
以下の5つの観点から最適な開発パートナーを見つけ、教育現場に役立つシステム構築を目指しましょう。
開発実績・事例の有無
教育分野に特化した開発実績が豊富な会社であれば、教育現場独自の課題を深く理解した的確な提案が期待できるでしょう。
【チェックすべきポイント】
- 学校の規模や種別と近い導入事例があるか
- 校務管理や学習基盤など、求める機能の開発経験があるか
- 教育機関特有の要件を理解した提案があるか
- 過去の顧客からの評価や継続利用率はどうか
公式サイトの「導入事例」ページを確認し、類似案件の実績を持つ会社を優先しましょう。また、可能であれば実際に導入済みの学校への訪問や担当者への問い合わせをしてみましょう。
教育現場特有の細かな要求(成績処理の複雑さや時間割編成など)に対応した実績があれば、要件漏れや現場感覚とのズレを防げます。
コミュニケーション体制・技術力
スムーズな意思疎通と高い技術力を兼ね備えた開発会社を選ぶことで、現場の要望に応える質の高いシステムが実現するでしょう。
【重視すべきポイント】
- 専任担当者の配置と定期的な進捗共有の仕組み
- 要件変更への柔軟な対応力
- エンジニアの保有スキルと教育分野の知識
- 問合せへの回答速度と質
開発中は要件の追加や変更が発生するものです。このとき臨機応変に対応できる体制があるかを事前に確認しましょう。
初回打ち合わせの質問内容や提案内容から、教育現場への理解度も見極めることができます。技術力の高さは完成度を左右しますが、それ以上に発注側との意思疎通能力が高いかが重要です。
特に学校現場では、システムの専門家ではない教職員が主な利用者となるため、専門用語をわかりやすく説明できる能力や、現場の声に耳を傾ける姿勢を持った会社を選びましょう。
セキュリティ・個人情報保護の対応レベル
教育系システムでは生徒情報や成績など機微なデータを扱うため、高度なセキュリティ対策が不可欠です。万全の保護体制を整えた開発会社を選ぶことで、安全な運用環境が構築できます。
【確認すべきセキュリティ要素】
- 情報セキュリティ関連の認証取得状況
- 個人情報保護法や文科省ガイドラインへの準拠
- データ暗号化・アクセス権限管理の実装方法
- 情報漏洩時の対応計画と補償体制
開発会社には具体的なセキュリティ対策について質問し、明確な回答があるかを確認しましょう。教育現場では教員や生徒が誤って機密情報にアクセスするリスクもあるため、適切なアクセス制御機能の実装経験も重要です。
また、クラウド型システムの場合はデータ保管場所やバックアップ体制、災害対策などについても確認が必要です。過去に情報漏洩事故がないか、万一の際の対応体制は整っているかも判断材料となります。
予算・納期の柔軟性
開発会社を選ぶ際は、複数社から見積もりを取り比較検討しましょう。
その中でも予算・納期に関するチェック事項は以下の通りです。
【予算・納期に関するチェック項目】
- 見積もりの内訳の透明性
- 段階的な機能追加(スモールスタート)の提案力
- 自社内で開発完結できる体制の有無
- スケジュール遅延時の対応方針
見積もりの比較では金額の安さだけで判断せず、含まれる機能や保守範囲を精査することが大切です。教育現場の予算制約を考慮し、必要最低限の機能からスタートして段階的に拡張できる柔軟な提案をしてくれる会社が理想的です。
納期については、学期や年度の区切りに合わせた導入が望ましいため、その時期に確実に納品できる体制があるかを確認しましょう。開発を下請けに出す会社よりも、自社内で一貫して対応できる会社のほうが進捗管理がしやすく、品質のばらつきも少ない傾向にあります。
価格だけでなく提供価値とのバランスを見極め、無理のないスケジュールを組める開発会社を選びましょう。
サポート・運用支援体制
システム導入後の継続的なサポート体制も重要です。
【サポート体制の評価ポイント】
- 導入後の問合せ対応窓口と対応時間
- 教職員向け操作研修の内容と実施方法
- 定期点検やバージョンアップ対応の有無
- 長期的な保守費用と範囲の明確さ
学校現場ではシステムを毎日継続的に利用するため、不具合発生時の迅速な対応が必須です。特に年度更新や成績処理など重要な時期のサポート体制については詳細に確認しましょう。
また、システムに不慣れな教員のための操作研修やマニュアル整備が充実している会社が望ましいです。保守契約の内容も重要で、障害対応だけでなく、定期的な機能改善や法改正対応なども含まれているかをチェックしましょう。
「導入して終わり」ではなく、継続的な改善提案や運用支援を行う姿勢の会社を選ぶことで、長期にわたって教育現場に貢献するシステム環境が実現します。
トッパジャパンの教育系システム導入事例

ここでは、トッパジャパンの教育系システムの導入事例をご紹介します。
- 事例①教育系アプリ(プログラム教育)のVR(Virtual Reality)モジュール開発
- 事例②電子ホワイトボードにバンドルするAIアプリケーション開発
- 事例③校務支援ソフトのセキュリティ強化の対応
それぞれ詳しくみていきましょう。
事例①教育系アプリ(プログラム教育)のVR(Virtual Reality)モジュール開発
あるメーカーが既存教育アプリの売上低迷を受け、差別化要素としてVR技術を導入したバージョンアップを計画していました。
しかし社内にVR技術者がおらず、リリース期限が迫る中で人材確保に苦戦していました。そこでトッパジャパンのVR開発経験豊富な技術者チームが開発を担当。専門技術を活かして短期間でのVRモジュール実装を実現し、予定通りのリリースに貢献しました。
事例②電子ホワイトボードにバンドルするAIアプリケーション開発
電子ホワイトボード市場では多数のメーカーが競合し価格競争が激化していました。あるメーカーは差別化戦略として、AIを活用した独自機能の開発を計画。
トッパジャパンのAI開発の豊富な実績と専門知識が評価され、他社製品にはない特化型アプリケーション開発を担当しました。この新機能により、クライアントは価格競争から脱却し、市場での独自ポジションを確立することに成功しています。
事例③校務支援ソフトのセキュリティ強化の対応
すでに市場展開している校務支援ソフトのセキュリティ対応が、クライアントのリソース不足により遅延していました。
トッパジャパンがこの課題に対し、特に重要な「認証と認可の強化」部分の開発を担当。セキュリティ専門知識を活かした実装により、クライアントは期限内にバージョンアップを完了でき、ユーザーの大切な情報を守るための対応を迅速に行うことができました。
まとめ
教育のデジタル化が加速する中、適切な教育系システム開発会社の選定は教育機関の将来を左右する重要な決断です。
本記事では、教育系メーカーが注力する3つの領域(ハードウェア、ソフトウェア、EdTech)と、教育システム開発に強みを持つ5社の特徴を紹介しました。
開発会社選びでは、教育分野の開発実績、コミュニケーション体制と技術力、セキュリティ対応レベル、予算・納期の柔軟性、導入後のサポート体制の5つの視点から総合的に判断しましょう。