
自然言語処理(NLP)は、私たちの生活やビジネスに急速に浸透しつつある最新技術です。これまで人間にしかできなかった業務の自動化を可能にし、多くの企業が導入を進めています。
本記事では、自然言語処理の基礎知識や機械学習との違いから、代表的な技術・活用事例について詳しく解説します。自然言語処理をこれから導入したい方や技術理解を深めたい方は、ぜひ参考にしてください。
自然言語処理(NLP)とは
自然言語処理(NLP)は、人間が日常的に使う自然言語をコンピューターに理解・処理・生成させる技術です。AI技術の一分野であり、特に言語の理解と生成にフォーカスしています。
近年はビジネスシーンへの導入も進んでいます。まずは、そんな自然言語処理の概要について整理していきましょう。
自然言語処理と機械学習の違い
自然言語処理と機械学習は、密接に関連する最新技術です。
自然言語処理とは、人間の言葉を理解・解釈・生成する技術です。たとえば、文章の要約・質問への応答・文書のジャンル分類などのタスクに活用できます。
一方、機械学習はデータからパターンやルールを学習し、自動で予測や分類を行う技術です。
機械が学習するためには、自然言語を機械が理解できるデータに変換する必要があるため、自然言語処理が欠かせません。また、自然言語を機械に理解させるデータに変換する精度を上げるためには、多様な自然言語処理タスクを学習した機械学習モデルが必要になります。
自然言語処理と機械学習は相互に作用し合う技術なのです。
また、以下記事ではAIの開発手法や、AIを活用したシステム開発事例を紹介しています。あわせてご覧ください。
→ AI開発の主な手法とは?開発に必要な言語やAIを活用したシステム開発の事例も紹介 – トッパジャパン株式会社
自然言語処理が注目される理由
自然言語処理は、多くの人々の生活に普及している非常に注目度の高い技術です。自然言語処理が注目を集めている理由は、主に以下の3点が挙げられます。
- 生成AIの進化と実用化
- 業務効率化ニーズの高まり
- テキストデータの爆発的増加
ChatGPTやGeminiの登場によって、生成AIは多くの人にとって身近な存在となりました。日常のなかでAIを活用することは当たり前になりつつあります。
そんなAIの進化と普及に伴い、ビジネスシーンではAIを活用した業務効率化を推進する動きが見られます。たとえば、電話の自動応答や議事録の自動要約、施策の立案など、業務を自然言語処理技術を用いるAIに任せて、時間やリソースの節約を実現しようとしているのです。
また、自然言語処理のニーズの高まりには、デジタルデバイスの普及も影響しています。デジタルデバイスの一般化に伴い、SNSやネット記事、ビジネス文書など、オンライン上のテキストデータ量は急増しました。
こうした非構造化データを活用する手段として、自然言語処理の価値が急速に高まっているのです。
このように、自然言語処理はAI時代における基盤技術のひとつとして、今後さらに多くの業界・用途において活用されることが予想されます。
また、以下記事では生成AIのChatGPTを活用した業務効率化アイデアとプロンプトを紹介しています。あわせてご覧ください。
→ ChatGPTによる業務効率化のアイデアとプロンプト集!セキュリティ対策も解説 – トッパジャパン株式会社
自然言語処理(NLP)の種類
自然言語処理は、主に「自然言語理解(NLU)」と「自然言語生成(NLG)」の2種類に分類できます。ここでは、それぞれの概要や特徴について解説します。
自然言語理解(NLU)
自然言語理解(NLU)は、ユーザーの入力文を正確に読み取り、言語の意味や意図を解釈する技術です。
たとえば、以下のような処理が含まれます。
| 意図認識(Intent Recognition) | 入力文の目的を分類する (「予約したい」「キャンセルしたい」など) |
| 固有表現抽出(NER) | 日付・人名・地名などの重要語句を抽出する |
| 感情分析(Sentiment Analysis) | 文のポジティブ/ネガティブ感情を判定する |
| 構文解析・意味解析 | 文法構造や語と語の関係を分析する |
NLUは、チャットボットや音声アシスタント、カスタマーサポートなど、ユーザーの発言の意味を深く理解しなければならない場面で活用されています。精度の高いNLUを実現するためには、文脈理解や曖昧な表現への対応が不可欠であり、深層学習モデルの活用が進んでいます。
自然言語生成(NLG)
自然言語生成(NLG)は、コンピュータが構造化データや処理結果をもとに、人間が自然に読める文章を自動生成する技術です。具体的には、以下のような処理が含まれます。
| 質問応答(Question Answering) | 質問に対する回答文を生成する |
| テキスト要約(Text Summarization) | 文から要点を抽出して短くまとめる |
| レポート自動作成 | 売上データなどから報告書を自動生成する |
| ストーリー生成・創作 | 与えられたテーマに沿って文章を創作する |
大規模言語モデルは、まさにNLGの進化形といえ、柔軟で文脈に即した文章生成が可能です。NLGは、業務の自動化やUXの向上において、今後ますます重要性を増す分野です。
自然言語処理(NLP)の仕組み
自然言語は複雑なので、前処理から文脈理解まで段階的に処理が進められます。ここでは、自然言語処理の仕組みについて紹介します。
1. 機械可読辞書
機械可読辞書は、人間向けの言語情報をコンピュータが処理可能な形式に変換した辞書データです。。書籍などの情報をコンピューターが理解できるように置き換えた通信規格であり、いわば「ロボットの目」のような役割を担っています。
代表的な機械可読辞書としては、日本語の形態素解析に用いる「IPADIC」、国語学的観点から細かく品詞を分類する「UniDic」、英語の意味的類似語・上位語・下位語を網羅した「WordNet」があります。
辞書の品質や網羅性は、後続の解析精度に大きな影響を与えるため、対象言語や用途に応じた最適な辞書を選定することが重要です。
2. コーパス
コーパスとは、自然言語処理を行う際に必要となる言語表現を大量に収集・整理したデータ群を構造化して大規模に集積したものです。具体的には、新聞記事や小説、SNS投稿など、現実に使われた言語表現をデータとして活用します。
自然言語処理のモデル開発や精度検証では、コーパスをもとに単語の出現頻度や文法的傾向を学習させます。ある言葉がどのような文脈で使われやすいか、どの単語と一緒に現れやすいかといった情報は、機械学習モデルにとっての貴重な手がかりです。
コーパスの質と量がそのまま開発成果に直結するため、対象とする領域に合ったテキストデータを丁寧に整備することが重要です。
3. 形態素解析
自然言語処理において、日本語のように単語の区切りが明示されていない言語では、形態素解析が不可欠な工程となります。形態素とは、意味を持つ最小単位のことであり、文章をこの単位ごとに分割して品詞情報を付与するのが形態素解析の目的です。
たとえば、「私は学生です」という文を解析すると、「私」「は」「学生」「です」という4つの形態素に分けられ、それぞれに品詞が割り当てられます。
この処理が正確に行われなければ、文章全体の意味を把握することは困難です。使用する辞書や解析エンジンの精度によって、解析結果の質は大きく変わるため、ここでの調整やカスタマイズも重要です。
4. 構文解析(依存構造解析・意味解析)
構文解析では、文の中で単語や句がどのような関係性を持っているかを明らかにします。特に、単語と単語の係り受けを明示する依存構造解析が中心的な役割を果たします。
たとえば、「彼がリンゴを食べた」という文は、「彼が」は「食べた」に係り、「リンゴを」もまた「食べた」に係るという構造です。その先の意味解析では、文の構造をもとに、「主語」「目的語」「述語」といった意味的役割を抽出します。
こうした解析により、コンピュータは「誰が」「何を」「どうした」という人間にとって自然な文の意味構造を把握できるようになります。
5. 文脈解析
文脈解析では、単一の文だけでなく、前後の文章や会話の流れといった広い文脈を踏まえて、意味を深く理解します。
たとえば、「それが好き」という文において、「それ」が指している対象を特定するには、直前に何について話していたのかを把握しておく必要があります。また、同じ言葉でも文脈によって意味が変わることがあるため、周辺の語句との関係性も正しく理解しなければなりません。
文脈解析は、より自然で人間に近い応答や分類を可能にする、NLPにおける最終的かつ最も重要なステップといえるでしょう。
自然言語処理(NLP)の活用事例
自然言語処理の活用範囲は年々広がっており、業務効率化やサービス品質の向上、ユーザー体験の最適化など、さまざまな場面で活用されています。ここでは、実際に自然言語処理が活用されている代表的な事例をいくつか紹介します。
| 活用分野 | 主な目的・課題解決 | 具体的な活用例 |
| チャットボット | 顧客対応の自動化・省人化 | ユーザーの質問を自動認識し、適切な回答を返す 例:ECサイトの問い合わせ窓口、社内ヘルプデスク |
| 感情分析・口コミ解析 | ユーザーの声の傾向分析・商品評価の把握 | SNSやレビューのテキストを解析し、ポジ/ネガを分類する 例:飲食・化粧品・アプリなどのレビュー分析 |
| 文書の要約・分類 | 情報の整理・読みやすさ向上 | 長文の報告書・記事を自動で要約、カテゴリ分けする 例:社内議事録の要約、顧客対応履歴の自動分類 |
| 音声認識・テキスト変換 | 会話の記録や入力の効率化 | 音声を文字に変換し、議事録作成や検索に活用する 例:営業商談の記録、コールセンターのログ分析 |
| 自動翻訳 | 多言語対応・グローバル展開支援 | 文章を自動翻訳し、多言語運用を実現する 例:海外ユーザー向けチャット、製品マニュアル翻訳 |
| 自動応答生成 | レポート・メール・要約文などの自動作成 | 構造化データから自然な文章を生成する 例:日報の自動生成、問い合わせメールの下書き作成 |
| レコメンド/検索支援 | ユーザー体験の向上・CVR改善 | 検索意図を解釈し、関連商品や情報を表示する 例:ECサイトの商品レコメンド、FAQの最適化表示 |
自然言語処理は単なる研究領域にとどまらず、すでに私たちの生活やビジネスに深く浸透しています。大規模言語モデルや生成AIとの連携が進むことで、さらに高精度かつ多機能な応用が期待される分野です。
企業にとっても、自然言語処理の導入は競争力を高める重要な選択肢となりつつあります。
自然言語処理の開発で使われるツール
自然言語処理の開発では、用途や言語、タスクに応じて、さまざまなライブラリやAPIが活用されています。この章では、自然言語処理の開発現場でよく使われているツールを紹介します。
MeCab
MeCabは、日本語に特化した高速・高精度な形態素解析エンジンです。文を単語レベルに分割し、それぞれの品詞や読み、活用形などの情報を与えます。
日本語は英語と異なり、単語間にスペースがないため、まず文章を構造的に分割する形態素解析を行わなければなりません。軽量でカスタマイズ性が高く、IPADICなどの辞書と組み合わせてよく使われます。
spaCy
spaCyは、Pythonで書かれた実務向けの自然言語処理ライブラリで、英語をはじめとする多言語に対応しています。トークン化や品詞タグ付け、係り受け解析、固有表現抽出などの基本機能が高速かつ高精度に動作し、商用利用にも耐えうる設計です。
デフォルトで高品質な事前学習済みモデルが付属しているため、手軽に高性能なNLPアプリケーションを構築できるのが特長です。
NLTK
NLTK(Natural Language Toolkit)は、教育・研究を目的としたPythonライブラリで、自然言語処理の基本的なアルゴリズムやサンプルデータが豊富に収録されています。文章の分割やタグ付け、パーサー構築、コーパス操作など幅広い機能を備えており、自然言語処理の仕組みを理解するうえで非常に有用です。
ただし、速度や実務的な使いやすさという点ではspaCyや他のライブラリに比べて劣るため、主に学習用途に適しています。
Transformers
Transformersは、Hugging Face社が開発したライブラリで、大規模言語モデルをPythonコードから簡単に扱えるようにしたものです。数行のコードで事前学習済みモデルを呼び出し、分類や要約、翻訳、質問応答などの高度なタスクをすぐに試せます。
日本語対応モデルも豊富に揃っており、クラウドAPIやローカル実行など、幅広い環境に対応できるのが魅力です。
自然言語処理(NLP)の開発会社を選ぶポイント
自然言語処理の開発は、どの会社に任せるかによってプロジェクトの成果は大きく変わります。ここでは、開発会社を選定するうえで押さえておきたい主なポイントを紹介します。
また、以下記事ではAI導入に強い開発会社やAIの導入事例について紹介しています。あわせてご覧ください。
→ AIシステム開発に強い会社5選!生成AIと従来のAIの違いや費用・導入事例も解説 – トッパジャパン株式会社
技術力と専門性の高さ
自然言語処理に関する技術力や専門性の高さをチェックしましょう。自然言語処理は、チャットボットやテキスト分類・要約、感情分析など、さまざまな領域を含む技術です。
自社が取り組みたいタスクと類似する事例を持っているか、どのような手法やモデルを用いて開発してきたかを確認することが重要です。
特に、大規模言語モデルを活用しているかは、精度や柔軟性に関わる重要な指標になります。単なるAPI連携にとどまらず、モデル開発力やチューニング、独自設計が可能かどうかも見極めましょう。
データ設計・前処理への対応力
自然言語処理においては、学習データの質と量が最終的な成果に大きな影響を与えます。テキストデータの収集・整理・アノテーションといった前処理の工程をどれだけ丁寧に行ってくれるかも重要なポイントです。
社内に十分なデータがない場合や、自然言語処理を初めて導入する場合には、データ整備の段階から伴走してくれる開発会社が望ましいです。PoC(概念実証)を経て段階的に開発を進める企業は、課題に即した柔軟な対応が期待できます。
導入実績と事例の信頼性
導入実績や開発事例は、開発会社を選ぶうえで必ず確認すべき項目です。自社と同業種・同業界での実績があれば、精度の高い提案が期待できます。
また、精度向上率や工数削減率など、具体的な成果について言及している実績があれば、より効果をイメージしやすくなります。実績紹介ページやインタビュー記事などが公開されていれば、ぜひチェックしてみましょう。
また、以下記事ではAI開発の費用相場やコストを抑えるコツについて紹介しています。あわせてご覧ください。
→ AI開発の費用相場を解説!費用を抑えるコツやおすすめの開発企業も紹介 – トッパジャパン株式会社
運用・改善の支援体制
自然言語処理は一度構築して終わりではなく、運用しながら継続的にチューニングを重ねる必要があります。ユーザーの入力が変化するようなアプリケーションは、定期的な評価・改善が欠かせません。
このため、保守運用や定期的なモデル再学習、ログ分析などを含めた中長期の支援体制を用意しているかも、開発会社の選定時に確認しておくべき重要な項目です。
また、以下記事ではAI開発で利用可能な補助金や申請のポイントについて紹介しています。あわせてご覧ください。
→ AI開発で活用できる補助金4選|申請のコツと最新制度の探し方を解説 – トッパジャパン株式会社
まとめ
自然言語処理(NLP)は、単なるAI技術の一部ではなく、今やビジネスの競争力を左右する基盤技術のひとつになりつつあります。
一方で、自然言語処理を正しく活用するには、言語モデルやツール、データ設計、継続的な運用といった要素をバランスよく設計する必要があります。開発を外部に委託する場合には、技術力だけでなく実績・対応力・支援体制など、パートナー企業を多方面から見極めることも重要です。
本記事を通じて、自然言語処理の導入や開発を検討するうえでの理解が深まり、自社に最適な活用方法を見出す一助となれば幸いです。今後ますます進化するAI時代に備え、自然言語処理を戦略的に活用していきましょう。
自然言語処理の開発会社をお探しの方は、先進技術の開発に強いトッパジャパンにご相談ください。高い品質と低コストを両立した開発を実現します。
また、以下記事ではAI開発に強い企業を26社厳選しています。あわせてご覧ください。
→ AI開発に強いおすすめの企業26選!依頼前のチェックポイントや相場費用も解説 – トッパジャパン株式会社
この記事の著者
- ベトナムの優秀な開発チームによるオフショア開発サービスを提供している開発会社。国内基準のコミュニケーション・品質・対応を重視し、幅広いスキルを持つエンジニアが高品質で安心な開発を実現。柔軟性とコストパフォーマンスを両立したサービスで、お客様のニーズにお応えしています。
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