
ニアショア開発とは?国内の地方企業に開発を委託することで、コスト削減と高品質を両立。オフショアとの違いや成功のコツも解説。
都市部の人材不足や開発コストの高騰を背景に、国内の地方リソースを活用する「ニアショア開発」が注目を集めています。オフショア開発に比べて言語や文化の壁が少なく、円滑なコミュニケーションや品質管理が期待できるのが大きな特徴です。
本記事では、ニアショア開発の基本からオフショア開発との違い、メリット・デメリット、向いている案件の特徴、成功のポイントまでをわかりやすく解説します。初めてニアショア導入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
ニアショア開発とは?
近年、IT業界では「ニアショア開発」が注目されています。ここでは、ニアショア開発について紹介します。
ニアショア開発の概要やオフショア開発との違いについて知りたい方は、こちらの内容を参考にしてください。
ニアショア開発の定義
ニアショア開発とは、首都圏や都市部の企業が、地方の開発会社やチームへ業務を外注する開発手法です。「ニア(Near=近い)+ショア(Shore=岸)」という言葉のとおり、地理的・文化的に近い地域との連携が前提です。
距離的には離れているものの、言語や文化、タイムゾーンを共有しているため、都市部の高騰した人件費を抑えつつ、品質を維持した開発体制を構築できます。特に、都市部のIT人材不足が深刻化する中で、地方のリソースを活用できる手段として注目されています。
オフショア開発との違い
ニアショア開発とオフショア開発の最大の違いは「開発を委託する地域」です。
ニアショアは国内の地方都市や地方企業への委託であるのに対し、オフショアはベトナムやインドなど海外に業務を委託します。オフショア開発はコスト面で有利な一方で、言語や文化、タイムゾーンの違いによるコミュニケーションリスクや品質管理の難しさが課題となります。
対してニアショア開発は、日本語でのやり取りが可能で、文化的な相違も少なく、意思疎通がしやすいため、プロジェクト管理の負担が比較的軽減されるのが特徴です。
また、それぞれの違いについて、「コスト」「コミュニケーション」「品質管理」などの観点から比較し、自社に合った委託先選びの参考になるようにまとめました。
比較項目 | ニアショア開発 | オフショア開発 |
委託先の場所 | 国内(地方都市など) | 海外(アジア・東欧など) |
言語・文化の違い | ほぼなし(日本語・日本文化) | 英語など言語の壁あり/文化的差異も大きい |
コスト | 都市部よりは安いが中程度 | 最も安価なケースが多い |
タイムゾーンの差 | ほぼなし(同一国内) | 時差があり対応にズレが出ることも |
コミュニケーションのしやすさ | スムーズ(対面も可能) | 言語・時差の影響で調整が必要 |
品質管理のしやすさ | 高い(国内基準が共有されている) | 国や開発体制によってばらつきあり |
セキュリティ面 | 日本の法令・基準に準拠しやすい | 情報管理体制の確認が必要 |
導入・立ち上げスピード | 比較的スムーズ | 教育・体制整備に時間がかかることも |
ニアショア開発は、オフショアに比べてコスト面の優位性はやや劣るものの、日本語によるスムーズなやり取りや、品質・セキュリティの観点から安心して任せられる点が強みです。
一方で、より大規模でコスト削減を最優先するプロジェクトでは、オフショアの活用も選択肢となります。自社の目的や体制に応じて、最適な手法を選びましょう。
また、以下記事ではオフショア開発について詳しく解説しています。オフショア開発について知りたい方は、あわせてご覧ください。
→ オフショア開発とは?メリット・デメリットや失敗例・おすすめの開発企業も紹介 – トッパジャパン株式会社
ニアショア開発を選ぶメリット
ニアショア開発を選ぶメリットを紹介します。ニアショア開発の導入を検討している方は、こちらの内容を参考にしてください。
メリット1. コスト削減を目指せる
ニアショア開発の最大のメリットは、都市部と比較して人件費やオフィス賃料が低い地方の開発リソースの活用により、開発コストの削減が期待できる点です。たとえば、東京でエンジニアを雇用する場合と比べて、同等のスキルを持つ地方エンジニアを活用することで、費用を大幅に抑えながらも安定した開発体制を構築できます。
人材不足によって高騰する都市部の単価に悩む企業にとって、コストパフォーマンスの高い選択肢となります。
また、以下の記事ではオフショア開発のコストについて詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。
→ オフショア開発の国別の価格帯!費用を抑えるコツや国内開発との比較も解説 – トッパジャパン株式会社
メリット2. コミュニケーションが円滑
ニアショア開発は、国内人材同士でのやりとりとなるため、コミュニケーションがスムーズに行える点も大きな利点です。海外人材に委託する際に起こりがちな言語や文化、ビジネスマナーの違いによるトラブルが起きにくく、時差もないため、リアルタイムでのミーティングや緊急対応も可能です。
また、必要に応じて現地訪問や対面での打ち合わせも容易なので、プロジェクトの進行や意思決定を迅速に行えます。
メリット3. 品質管理がしやすい
ニアショア開発では、日本国内の開発基準や品質要求に基づいて作業が進められるため、品質のばらつきや認識のズレが起きにくい点もメリットです。ドキュメントやテスト仕様書のフォーマットも共通化しやすく、進捗管理やレビュー体制の構築もスムーズです。
オフショア開発にありがちな品質面での不安を軽減できるため、信頼性の高いシステム開発を実現したい企業にとって安心できる選択肢といえるでしょう。
ニアショア開発のデメリットと注意点
ニアショア開発の導入にあたって、注意すべきデメリットについて紹介します。ニアショア開発を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
1. 即戦力人材の獲得が難しい
ニアショア開発では、地方の人材を活用できる一方で、都市部に比べてIT人材の母数が少ないことから、即戦力人材を確保するのが難しい場合があります。特に最新の開発技術や特殊な業務知識を要する案件では、希望するスキルセットを持つエンジニアを見つけるのに時間がかかることもあります。
人材リソースの流動性が低い地域では、案件の規模や納期に応じた柔軟なチーム編成がしにくい点も考慮が必要です。
2. 教育コストがかかる
ニアショア先の開発チームが自社業務や業界特有の要件に不慣れな場合、業務知識やプロジェクトの進め方を共有するための教育・オンボーディングに時間とコストがかかります。また、地方の開発チームが都市部のスピード感や商習慣に慣れていないケースでは、綿密なレクチャーや仕様書の整備、QA対応などの対応が必要です。
長期的なパートナーシップを前提に考えることで、投資対効果を高めやすくなります。
また、以下の記事ではシステム開発におけるコスト削減策を紹介しています。あわせてご覧ください。
→ システム開発のコスト削減策6選!コストが高騰する原因や成功事例も紹介 – トッパジャパン株式会社
3. 地域ごとのスキル差がある
ニアショア先の地域によっては、特定分野に強みを持つ開発会社が集中していたり、逆に特定技術の対応が難しいエリアも存在します。たとえば、ある地域では組込み開発に特化している一方で、Web系やクラウド開発の実績が少ないといったケースは珍しくありません。
そのため、ニーズに合ったスキルセットを持つベンダーを見極める必要があり、依頼先の選定には慎重な調査と比較検討が欠かせません。
4. セキュリティ体制の強化が必須
業務委託を行う以上、ニアショア先においても十分なセキュリティ対策を講じていることが前提となります。特に、個人情報や業務機密を扱うシステム開発では、社内と同等以上の情報管理体制が求められます。
ISMSなどの第三者認証を取得しているか、アクセス権限やログ管理の体制が整っているかなどを事前に確認することが重要です。セキュリティ意識が甘い企業を選んでしまうと、情報漏えいやトラブルのリスクが高まります。
ニアショア開発が向いている企業・案件の特徴
ニアショア開発が向いている企業・案件の特徴を紹介します。ニアショア開発を検討している場合は、ぜひ参考にしてください。
特徴1. 外注を検討している
「自社内でのリソース確保が難しい」「開発スピードを上げたい」といった理由で開発業務の外注を検討している企業にとって、ニアショア開発は有力な選択肢です。都市部人材の登用よりコストを抑えつつ、国内基準の品質やコミュニケーションが期待できるため、初めて外注に取り組む企業でも安心して導入できます。
また、外注先との距離が近く、信頼関係を築きやすい点も魅力です。海外人材を雇用するオフショア開発と比べても、導入ハードルが低いのが魅力といえるでしょう。
特徴2. 長期的な運用・保守を含む案件がある
短期的な開発だけでなく、継続的な機能追加や保守運用が求められる中長期プロジェクトを抱えている企業には、ニアショア開発が適しています。同じ国内に開発チームがいることで、仕様変更やトラブル発生時にも迅速に対応できます。
長期的な信頼関係のもとで安定した開発体制を築くことも可能です。継続的な改善が必要なSaaSや業務システムの開発・運用においては、特にその効果が発揮されます。
特徴3. 円滑なコミュニケーションを重視している
開発期間が限られていたり、社内外の関係者とのやり取りが頻繁に発生するようなプロジェクトでは、コミュニケーションのスピードと正確性が非常に重要です。ニアショア開発は、言語・文化の障壁がなく、タイムゾーンも一致しているため、即時のレスポンスや対面・オンラインでの円滑なやりとりを実現できます。
プロジェクト進行上の意思疎通ミスや遅延リスクを最小限に抑えたい企業には最適な選択肢と言えるでしょう。
ニアショア開発を成功させるポイント
ニアショア開発を成功させるには、以下のポイントを意識することが大切です。ニアショア開発の実施前にチェックしてみてください。
ポイント1. 仕様を明確化する
ポイント2. 開発会社のスキルや対応力を確認する
ポイント3. コミュニケーション体制を確立する
ポイント4. テスト・レビュー体制を強化する
ポイント1. 仕様を明確化する
ニアショア開発では、都市部と物理的な距離がある分、最初の段階で「何を」「どのように」開発してほしいのかを明確に伝えることが非常に重要です。口頭ベースの指示に頼らず、要件定義書や設計書、画面遷移図などを文書化して共有することで、認識のズレを防ぎ、スムーズな開発進行が可能になります。
仕様の曖昧さが後工程でのトラブルや工数の増加につながるため、事前準備にしっかり時間をかけましょう。
ポイント2. 開発会社のスキルや対応力を確認する
ニアショア開発の成果は、委託先の開発会社のスキルと対応力に大きく左右されます。実績や得意領域、対応可能な技術スタックはもちろん、過去のプロジェクトでのトラブル対応や提案力なども含めて慎重に選定することが求められます。
また、開発工程だけでなく、運用・保守や改善提案まで対応できるかも重要な判断軸です。信頼関係を築けるパートナーかどうか、複数社を比較検討して判断しましょう。
ポイント3. コミュニケーション体制を確立する
開発を円滑に進めるには、定例ミーティングやチャットツールを活用したリアルタイムの連携体制が欠かせません。ニアショア開発では時差の心配はないものの、離れた拠点同士でプロジェクトを進めるため、意識的に情報共有の頻度と質を高める必要があります。
タスク管理ツールや進捗レポートを活用し、「報・連・相」が習慣化された運用体制を構築しましょう。
ポイント4. テスト・レビュー体制を強化する
ニアショア開発では、プロジェクトの初期段階から品質管理の体制を整えることが重要です。開発中に随時レビューを実施したり、テスト項目を明文化したうえで成果物のチェックを行うことで、手戻りや品質トラブルを防ぐことができます。
受け入れテストの基準やスケジュールも明確にし、委託先との役割分担や責任範囲をあらかじめ合意しておくことが、信頼関係の構築にもつながります。
まとめ
ニアショア開発は、都市部のIT人材不足やコスト高といった課題を解決する手段として、多くの企業にとって有効な選択肢となります。国内の地方企業と連携することで、言語や文化、時差の壁を感じることなく、品質の高い開発体制を構築できるのが魅力です。
一方で、即戦力人材の確保や教育コスト、地域によるスキルの差、セキュリティ対策など、事前に把握しておくべき課題も存在します。委託先の選定や仕様の明確化、コミュニケーション体制の整備など、ポイントを押さえた運用によって、ニアショア開発は大きな成果を生み出せるでしょう。
また、大規模・長期プロジェクトでは、オフショア開発の活用もおすすめです。即戦力の人材を低コストで登用しやすく、24時間体制の開発で納期短縮も期待できます。
言語や文化の違いによるコミュニケーションの障壁やタイムゾーン管理などの課題は、サポート会社の協力を仰ぐことで解決できます。オフショア開発の活用を検討する場合は、実績豊富なトッパジャパンにご相談ください。
この記事の著者

- ベトナムの優秀な開発チームによるオフショア開発サービスを提供している開発会社。国内基準のコミュニケーション・品質・対応を重視し、幅広いスキルを持つエンジニアが高品質で安心な開発を実現。柔軟性とコストパフォーマンスを両立したサービスで、お客様のニーズにお応えしています。
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