
オフショア開発を検討する際、契約形態として準委任契約を選択する企業が増えています。特に、ベトナムやインドなどを開発拠点とするケースでは、準委任契約が持つメリットが大きく評価されています。
本記事では、準委任契約の基本から請負契約との違い、実際に向いているプロジェクト例、導入時の注意点まで、オフショア開発における契約形態選びに役立つ情報を幅広く解説します。オフショア開発の準委任契約について知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
オフショア開発の準委任契約とは
オフショア開発における準委任契約とは、発注元企業が委託先企業に対して成果物ではなく業務の遂行自体を委託する契約形態です。近年では、ベトナムやフィリピン、インドなどのオフショア拠点と日本企業の間で、この準委任契約が広く用いられるようになってきました。
準委任契約のニーズが高まっている背景には、国内のエンジニア不足や開発リソースのひっ迫、スピード重視のアジャイル開発の浸透などがあります。こうした状況下では、仕様変更への柔軟な対応や継続的に人員を確保できる準委任契約が、従来の請負契約よりも有利に働くケースが多くなっているのです。
以下の記事ではオフショア開発におけるおすすめ企業について解説しています。あわせてご覧ください。
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準委任契約の概要
準委任契約とは、民法第656条に規定された契約形態で、法律行為以外の事務処理を他者に委託するものです。IT業界では、開発やテスト、保守・運用といった実務的な作業を外部に委託する際に使われるケースが多く、労働の対価として、稼働時間×単価に基づいて費用が発生します。
重要なのは、準委任契約では成果物の完成が報酬の条件にはなっていない点です。つまり、一定の業務を誠実に遂行すれば、たとえ成果物が完成しなくても報酬が発生します。
開発途中で要件変更が起きやすいプロジェクトや、アジャイル型の運用、または仕様が流動的なPoCフェーズなどにおいては、非常に適した契約方式といえます。
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請負契約との違い
準委任契約と混同されがちなのが請負契約です。両者の最大の違いは、報酬の発生条件にあります。
請負契約は、民法第632条に基づく契約で、明確な成果物を納品し、それが検収された後に報酬が支払われるものです。成果物の完成責任が受託側にあるため、納期や品質に対する責任の所在がはっきりしています。
一方、準委任契約では、報酬の対象は業務の遂行であり、成果物の完成は必須条件ではありません。受託者には善良な管理者の注意義務(善管注意義務)が求められますが、完成責任までは負いません。そのため、発注者側のプロジェクト管理能力や進行管理体制が重要になります。
オフショア開発で準委任契約が選ばれる理由
オフショア開発では、請負契約よりも準委任契約を選択する企業が増えています。ここでは、オフショア開発で準委任契約が選ばれる主な理由を4つ解説します。
理由1. 柔軟な体制変更・工数調整が可能
準委任契約では、月単位や週単位で契約工数を柔軟に見直せます。たとえば、開発フェーズが進んで設計工数が減った場合や、繁忙期に一時的に人員を増やしたい場合など、プロジェクトの進捗に応じてスピーディーに体制変更できるのが大きな利点です。
一方で請負契約では、成果物ベースの契約であるため、途中で仕様変更や工数変更があった場合は再契約や追加費用が発生しやすく、柔軟な運用には向いていません。
理由2. スピーディーな開発体制の立ち上げに最適
準委任契約では、あらかじめ仕様が確定していなくても開発体制を立ち上げることができます。業務の遂行自体を委託する形式なので、要件定義中にエンジニアをアサインし、段階的に開発を進めることが可能です。
オフショア開発では開発体制の立ち上げに時間がかかりがちですが、準委任契約であれば、必要なスキルを持った人材を早期に確保し、現地メンバーと密に連携しながら開発を始められます。
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理由3. 継続的な改善やアジャイル開発との相性が良い
アジャイル開発のように、要件が変化し続けるプロジェクトでは、仕様固定前提の請負契約では柔軟な対応が難しくなります。
準委任契約であれば、発注側がプロダクトオーナーとして仕様を逐次決定し、エンジニアとコミュニケーションを取りながら開発を進めることが可能です。スプリント単位で開発・改善を繰り返すスタイルにおいて、業務時間に応じて報酬を支払う準委任契約は極めて実用的です。
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理由4. リスク分散にも有効
請負契約では、納期や品質の全責任が受託側にあるため、成果物の遅延や品質不良が発生した際はトラブルになりやすく、最悪の場合は契約不履行や訴訟につながります。
一方、準委任契約では、発注側が開発を主導しながら進めるため、進捗や品質を逐次チェックできる体制が構築しやすく、プロジェクトが破綻する前に軌道修正が可能です。
また、発注側が複数の拠点に分散して開発リソースを確保することで、万が一、特定の拠点で問題が起きた場合にリスクを局所化しやすい点も評価されています。
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オフショア開発を準委任契約で発注する際の注意点
準委任契約は、オフショア開発に適した契約方法ですが、さまざまな注意点も存在します。
以下では、準委任契約を用いてオフショア開発を依頼する際に押さえておくべき4つの注意点を紹介します。
1. 成果物保証がないためマネジメントが重要
準委任契約は、作業の遂行が契約の目的であり、成果物の完成は保証されません。そのため、仕様の具体化や品質管理、スケジュール管理は発注者側の責任となります。
タスクの進め方や優先順位が不明確なまま放置すれば、エンジニアの工数は消費されても期待する成果が得られません。適切なタスク設計・指示出し・レビュー体制の構築が不可欠です。
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2. 稼働時間の可視化・進捗管理が必要
準委任契約では、実際に作業にかかった時間がそのまま費用につながるため、稼働状況を正しく把握し、可視化する仕組みが非常に重要です。たとえば、開発メンバーの作業内容が見えづらい状況では、過剰な工数が発生していても気づけないリスクがあります。
進捗状況がブラックボックス化すると、納期の遅れや品質劣化といった問題にもつながりかねません。日々の作業ログや工数報告を確認しながら、適切な作業配分や工数の妥当性を評価する体制が必要です。
また、定期的に進捗状況をレビューし、開発の方向性やリソースの調整を行うことで、プロジェクトの健全な運営が可能となります。
また、以下の記事ではオフショア開発におけるよくある悩みについて解説しています。あわせてご覧ください。
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3. こまめなコミュニケーションが不可欠
オフショア開発においては、地理的な距離や文化・言語の違いがある中で、認識のズレを防ぐためにも密なコミュニケーションが不可欠です。準委任契約では、仕様変更や優先順位の変更が発生しやすいため、リアルタイムな連携と柔軟な情報共有が求められます。
成果物ベースではなく業務の遂行そのものに報酬が発生する契約形態である以上、伝えたつもり・わかっているはずなどの思い込みを排して、丁寧かつ具体的な指示とフィードバックを徹底することが重要です。
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準委任契約に向いているオフショア開発のプロジェクト例
準委任契約は、柔軟性や継続性の高さから、多くのオフショア開発で活用されている契約形態です。ここでは、準委任契約に向いているオフショア開発のプロジェクト例について紹介します。
1. 大規模プロジェクト
大規模プロジェクトでは、準委任契約の柔軟性が大きな利点となります。開発期間が長期にわたるプロジェクトでは、フェーズごとに必要な人材や工数が変化するため、都度調整ができる準委任契約は非常に都合が良いのです。
また、複数の工程が並行して進む大規模案件では、状況に応じてタスクの優先順位を入れ替えるケースがあります。こうした場合、仕様変更のたびに再契約が必要な請負契約では対応が煩雑になりますが、準委任契約であれば発注者の判断に応じて柔軟に作業内容を調整できます。
リソースの弾力的な運用が求められる大規模案件こそ、準委任契約の本領が発揮される場面と言えるでしょう。
2. 要件が流動的なプロジェクト
リリース後のユーザー反応や市場動向を見ながら段階的に仕様を決めていくようなプロジェクトでは、初期段階から仕様を確定させることが難しくなります。このようなケースでは、あらかじめゴールが明確であることを前提とする請負契約よりも、柔軟な調整が可能な準委任契約のほうが相性が良いです。
たとえば、新規サービスの立ち上げや、プロトタイプ開発、PoC(概念実証)フェーズなどでは、実際に動くものを見ながら方向性を模索する必要があります。準委任契約であれば、発注者が仕様を逐次調整しつつ、開発チームと一体となって意思決定を進められるため、プロジェクトの柔軟性とスピード感を両立できます。
3. 内製チームのような関係性を構築するプロジェクト
単発的な開発委託ではなく、発注者側のチームに近い形で継続的に開発を進める体制を構築したい場合にも、準委任契約は有効です。たとえば、エンジニアリングリソースを内製チームの一部として扱い、日々の定例ミーティングや開発プロセスに深く関与させるスタイルのプロジェクトでは、労働提供型である準委任契約のほうが自然な形で連携できます。
特にオフショア開発では、現地の開発チームと長期的なパートナーシップを築き、信頼関係を深めていくことが、プロジェクトの安定的な成功につながります。準委任契約であれば、メンバーの入れ替えや役割変更にも柔軟に対応でき、組織内の一員としての関係性を築きやすくなります。
まとめ
オフショア開発における準委任契約は、仕様変更が多く発生するプロジェクトや、内製チームに近い開発体制を構築したいケースにおいて非常に有効な手段です。業務遂行を主軸にした契約形態なので、柔軟な体制変更やスピーディーな人員調整にも対応できます。
一方で、成果物保証がないことや稼働管理の重要性、こまめなコミュニケーションの必要性など、発注者側には一定のマネジメント力が求められます。契約書の記載内容も含め、リスクをコントロールしながら準委任契約を活用することで、オフショア開発の効果を最大限に引き出すことができるでしょう。
また、オフショア開発の導入なら実績豊富なトッパジャパンにお任せください。トッパジャパンは、ベトナム開発チームによるオフショア開発サービスを提供します。
高品質で安心な開発サービスを柔軟かつ優れたコストパフォーマンスで提供可能です。トッパジャパンへのご相談は、以下よりお気軽にお問い合わせください。
この記事の著者
- ベトナムの優秀な開発チームによるオフショア開発サービスを提供している開発会社。国内基準のコミュニケーション・品質・対応を重視し、幅広いスキルを持つエンジニアが高品質で安心な開発を実現。柔軟性とコストパフォーマンスを両立したサービスで、お客様のニーズにお応えしています。
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