
教育分野におけるDXが加速する昨今、効果的な学習ツールとして教育アプリ開発への関心が高まっています。
しかし、いざ開発を検討しようにも、「一体どれくらいの費用がかかるのだろう?」といった費用面の疑問がある方も多いのではないでしょうか。
本記事では、教育アプリ開発の費用相場を種類別に詳しく解説するとともに、開発会社へ見積もりを依頼する前に必ず準備しておくべきこと、そして費用だけで開発会社を選んではいけない理由まで解説します。
さらに、信頼できる開発会社を選ぶためのポイントや、おすすめの開発会社5選もご紹介します。
目次
教育アプリの開発費用相場

教育アプリ開発を検討する際、気になるのは「一体いくらかかるのだろう?」という費用面ではないでしょうか。
この章では、教育アプリの種類ごとに、おおよその開発費用相場を紹介します。
- 子ども向け学習アプリ
- 語学学習アプリ
- 試験対策アプリ
- オンライン授業・動画配信アプリ
- チャットボット型学習支援アプリ
それぞれの特性や機能によって費用は大きく変動するため、自社が目指すアプリがどのカテゴリに該当し、どの程度の予算感で考えれば良いのか把握しておきましょう。
子ども向け学習アプリ
子ども向け学習アプリの開発費用は、一般的に50万円から150万円程度が目安です。ただし、機能や内容によっては300万円を超えるケースもあります。
子ども向けの学習アプリは比較的小規模で、特定の学習要素に絞ったものが主流と言えるでしょう。
しかし、提供するコンテンツを大幅に増やしたり、保護者向けの管理画面といった複雑な仕組みを盛り込むと開発費用は上昇し、300万円を超えることも想定しておく必要がありそうです。
語学学習アプリ
外国語習得を目的としたアプリの開発は、搭載する機能によって費用が大きく異なり、200万円から800万円程度が目安です。
語学学習アプリは、発音チェックのための音声機能や、会話練習といった多様なコンテンツが求められるため、実装する機能の範囲が費用を左右します。
基本的な単語学習や練習問題が中心のアプリであれば、200万円から300万円程度で形にできるかもしれません。
一方で、発音練習機能や動画教材の配信、学習進捗の管理、ユーザー同士のランキング機能などを備えた本格的な語学アプリとなると、費用は300万円から800万円程度まで跳ね上がる傾向にあるようです。
さらに、多言語に対応したり、AIによる講師機能を搭載したりするような大規模なプラットフォーム開発では、900万円近い予算が必要になるケースも考えられます。
試験対策アプリ
試験対策アプリは、主にクイズ形式の問題演習や模擬試験機能が核となります。個人が学習に使うような、過去問を解いて自分で採点するだけの基本的な問題演習アプリであれば、比較的費用を抑え、50万円から150万円の範囲で開発できる可能性があります。
しかし、解説動画を視聴できる機能を追加したり、成績を記録・分析するシステム、あるいは指導者側が進捗を管理できるような機能を実装するとなると、開発に必要な工数が増え、200万円から500万円程度の予算を見込むのが一般的でしょう。
実際に、クイズ機能に加えてユーザー管理やチャット機能などを組み込んだ場合、費用が300万円から800万円規模にまで膨らむケースもあります。
オンライン授業・動画配信アプリ
オンライン形式の学習アプリでは、動画配信に関連する開発コストが大きな比重を占めるのが特徴です。
他の種類の教育アプリと比較して多機能になりやすく、全体で500万円から1000万円程度の予算を要するケースもあります。
その主な内訳として、アプリ内で動画や音声を配信する仕組みの構築に約100万円から200万円、さらに教材やユーザー情報を管理するためのウェブシステムに約200万円以上が別途かかるケースもあります。
チャットボット型学習支援アプリ
チャットボットを用いた学習支援アプリは、搭載するAIの対話機能にかかる費用が大きなポイントとなります。
AIを搭載しない学習サポート系のアプリであれば、300万円前後が目安です。
しかし、このアプリの核となるチャットボット機能、つまりAIによる対話システムを開発・導入するには、追加のコストが発生します。AIチャットボットや音声認識機能を取り入れるには、最低でも100万円から300万円程度の予算を上乗せして考えるべきでしょう。
教育アプリ開発の見積りを左右する3つの要因

教育アプリの開発費用は、機能の違いや選択する開発の進め方によって大きく変動することがあります。
この章では、教育アプリの開発見積りがどのような要素で変わってくるのか、主な3つのポイントに絞って解説します。
- 開発手法(ノーコード・ハイブリッド・フルスクラッチ)
- アプリの機能要件
- 保守・運用内容
3つの要因を理解することで、開発会社へ見積りを依頼する際により的確な情報伝達ができるでしょう。
開発手法(ノーコード・ハイブリッド・フルスクラッチ)
アプリをどのように作るか、その「開発手法」の選択が見積り金額に大きな影響を与えます。手法ごとに費用感や特徴が異なるため、プロジェクトの目的や予算に合わせて最適なものを選ぶ必要があります。
開発手法 | 費用相場の目安 | メリット・デメリット |
ノーコード開発 | 数万円~数百万円 | メリット: 安価、迅速に開発できるデメリット: カスタマイズ性・拡張性に限界がある |
ハイブリッド開発 | 数十万円~数百万円 | メリット: マルチプラットフォーム対応デメリット: 重い処理やネイティブ機能に制約がある |
フルスクラッチ開発 | 数百万円~数千万円以上 | メリット: カスタマイズも自由、独自機能実装可能デメリット: 高額、開発期間が長期化 |
プログラミングスキルが不要なノーコード開発は、最もコストを抑えられ、スピーディーにアプリを形にできる方法で、場合によっては数万円程度から開発できることもあります。
次に、ウェブ技術を基盤として複数のOSに対応できるハイブリッド開発は、中間的な費用帯となり、数十万円から300万円程度が一つの目安となるでしょう。
そして、完全にゼロからオーダーメイドでプログラムを組んでいくフルスクラッチ開発は、デザインや機能の自由度が高い反面、費用も高額になる傾向です。
この手法では、最低でも数百万円、プロジェクトの規模や複雑さによっては数千万円規模に達することも珍しくありません。
アプリの機能要件
アプリにどのような「機能」をどれだけ盛り込むか、その内容と複雑さが、見積り額を左右する2つ目の要因です。
ポイント | 詳細 |
機能と費用の関係 | 機能数が多いほど、また機能が複雑なほど、開発工数が増え費用が上昇。 |
費用増の具体的な機能 | 高度なセキュリティ、他システム連携、リアルタイム通信、GPS連携など。 |
対応OS | 対応OSが増える(例: iOSとAndroid両対応)と、開発・テスト工数が増加。 |
コスト管理のコツ | 必要な機能を精査し、優先順位をつけて実装計画を立てる。 |
多くの機能を詰め込もうとすればそれだけ開発作業は複雑になり、必要な時間や手間(工数)が増えるため、結果として人件費がかさみ、総費用が膨らんでいきます。
そのため、本当に必要な機能は何かをじっくりと見極め、優先度の高いものから順番に実装していく計画を立てることが、無駄な機能追加によるコスト増を防ぐ進め方です。
保守・運用内容
アプリ開発の見積りを検討する際、開発費用だけでなく、リリース後の「保守・運用」にどれくらいの費用がかかるのかも忘れてはならないポイントです。
一般的には、年間の運用・保守にかかるコストとして、初期開発費用の20%程度を見込んでおきましょう。
特に、利用ユーザーが増えたり、アプリの機能が高度になったりするにつれて、この運用にかかる費用の割合は高くなる傾向があります。
そのため、開発会社から提示された見積金額を評価する際には、初期の開発費用のみに目を向けるのではなく、「どの範囲の保守・運用サービスが見積もりに含まれているのか」をしっかりと確認し、将来的に必要となる維持費用も考慮に入れた予算計画を立てることが重要です。
教育アプリ開発の見積りを依頼する前にやるべきこと

教育アプリの開発を外部の会社へ依頼しようと考えた際、いきなり見積もりを取るのではなく、事前に社内で準備しておくべきことがあります。
このひと手間で、開発パートナーとの間で起きやすい認識のズレを最小限に抑えることができ、見積書の精度も高くなります。
その後のプロジェクトを円滑に進めるためのポイントになりますので、具体的に何をすれば良いのかを解説します。
アプリの目的を具体的に書きだす
まずは「なぜこの教育アプリを作るのか」その目的を明確に言語化することから始めましょう。
ポイント | 詳細 |
目的明確化の重要性 | プロジェクトの方向性統一、関係者間の認識共有、不要な機能追加の防止。 |
具体的にすべきこと | 「どんな課題を解決したいか」「ユーザーにどんな価値を提供したいか」を書き出す。 |
期待される効果 | 開発会社が適切な提案をしやすくなる。 |
「リリースから半年でユーザー数を〇〇人獲得する」「教員の教材準備にかかる時間を現状から〇%短縮する」といった具体的な数値目標(KPI)も設定しておくと、開発会社側もその目標達成に向けた適切な機能や仕様を提案しやすくなるでしょう。
目的が具体的で、かつ関係者間で共有されていれば、プロジェクトの進行中に方向性がブレたり、本来不要な機能を追加してしまったりする事態を防ぐことにも繋がります。
開発スケジュール・予算の上限を決める
見積もりを取る前に社内で準備することとして、次に、アプリをいつまでに完成させたいかという希望納期(スケジュール)と、プロジェクトに投じられる予算の上限をあらかじめ定めておくことが挙げられます。
ポイント | 詳細 |
スケジュールの明確化 | 「〇年〇月末までにリリース必須」「新学期開始に間に合わせたい」など具体的に。 |
予算上限の設定 | 社内で承認された予算の上限と範囲を把握する。 |
事前整理のメリット | 開発会社が適切な提案をしやすくなり、見積もり依頼後の進行がスムーズに。 |
自社として支出可能な金額の範囲を把握し、それを伝えることで、開発手法の選択や、実装する機能の取捨選択について、より現実的で建設的な相談ができるようになります。
開発会社との打ち合わせの際には、「いつまでに、いくら以内で実現したいのか」をはっきりと示しましょう。
教育アプリ開発を「費用」だけで選んではいけない理由
教育アプリの開発パートナーを選ぶ際、多くの方が「できるだけ費用を抑えたい」と考えるのは当然のことかもしれません。しかし、提示された見積金額の安さだけで開発会社を即決してしまっては、後々大きな問題に繋がりかねないため注意が必要です。
あまりにも安価な見積もりには、以下のようなリスクが潜んでいる可能性があります。
- アプリの品質が下がる
- 後から追加費用を請求される
- 開発の納期が大幅に遅れる
- 将来の拡張が困難なシステム設計になる
表面的な金額に惑わされず、長期的な視点で信頼できるパートナーを見極めることが大切です。
教育アプリの開発会社を選ぶ際のポイント

教育アプリ開発で後悔しないためには、開発会社の選び方が重要です。
信頼できるパートナーを見つけ出すには、過去の実績・コミュニケーション能力・料金体系の透明性、そしてリリース後のサポート体制といった複数の視点から、総合的に評価する視点が必要です。
教育分野における開発実績・事例
まず確認すべきは、依頼を検討している会社が教育分野でどれだけの実績を持っているか、という点です。
- 教育分野特有の課題やニーズへの深い理解があるか
- 開発したいアプリと類似した開発経験の有無
- 教育効果を意識したUI/UX設計などの提案が期待できるか
教育アプリには、学習効果を高めるための工夫や、生徒・教員双方の使いやすさといった、特有の要件やニーズが存在します。
その分野に精通し、開発実績が豊富な会社であれば、プロジェクトをスムーズかつ高い品質で進められる可能性が高まるでしょう。
コミュニケーションと提案力
次に重視したいのが、開発会社との円滑なコミュニケーションと、こちらの要望を的確に捉えた上での提案力です。技術力が高くても意思の疎通がうまくいかなければ、プロジェクトは思わぬ方向へ進んでしまうかもしれません。
- 非エンジニアにも分かりやすく説明し、丁寧にヒアリングする対話力
- 指示通り作るだけでなく、課題解決へ向けた最適な提案力
- 初期打ち合わせでの回答の的確さや説明の分かりやすさ
- 専門用語の説明、代替案や改善提案、レスポンス速度
どんなに優れた技術を持っていても、開発会社と依頼者との間で意思疎通がスムーズに行えなければ、プロジェクトが途中で頓挫してしまうリスクさえあります。
そのため、専門知識がない人にも分かりやすく説明してくれるか、こちらの話を丁寧に聞き取り、意図を正確に理解しようとしてくれるか、といった「対話する力」が重要です。
明確な料金体系
開発会社を選ぶ上で、提示される見積もりが明確で、その内容が妥当であるかを見極めることも重要です。信頼できる会社は、料金の内訳や算出根拠をきちんと示してくれます。
- 総額だけでなく、工程ごとの内訳や工数が詳細な見積書か
- 各項目に不明瞭な点がなく、見積もり根拠が説明されているか
- 開発費に加え、保守や追加対応費も含めた総額が分かるか
- 契約範囲(基本料金と追加料金の境界)が明記されているか
見積書を受け取ったら、各項目に曖昧な点や理解できない部分がないか、また、見積もり金額の根拠となる情報がきちんと説明されているかをチェックしましょう。
サポート体制
教育アプリはリリースして終わりではなく、その後の継続的な運用と改善が重要です。そのため、開発後の保守運用やユーザーサポートに、開発会社がどの程度対応してくれるのかを事前にしっかりと確認しておく必要があります。
- 不具合の迅速な解消、機能改善やアップデートへの継続的対応
- 不具合対応範囲、緊急連絡体制、対応時間などの事前確認
充実した保守・サポート体制が整っている会社であれば、アプリをリリースした後に万が一不具合が発生した場合でも迅速に問題を解消し、機能の改善やOSのアップデートなどにも継続的に対応してくれるでしょう。
教育アプリ開発におすすめの会社5選
この章では、教育分野のアプリ開発で実績があり、注目すべき開発会社を5社ピックアップしてご紹介します。各社それぞれに特色や強みがあるため、自社のアプリ開発の目的や要望と照らし合わせながら、最適なパートナー探しの参考にしていただければ幸いです。
トッパジャパン株式会社

出典:トッパジャパン株式会社
トッパジャパン株式会社は、ベトナムに開発拠点を持ちながらも、日本の品質基準に基づいたITソリューションを展開しているオフショア開発企業です。教育分野、特に教育ICT領域でのシステム開発において豊富な経験があります。
【教育アプリの実績】
- 教育機関向けICTシステム開発の豊富な実績
- 特別支援教育向けに、視覚・聴覚支援や直感的操作が可能な学習支援アプリを開発
日本人プロジェクトマネージャーによる徹底した品質管理のもと、ベトナムの優秀なエンジニアチームが高品質かつ柔軟なサービスを提供し、コストパフォーマンスと品質の両立を実現。
AIやロボット技術といった先進技術を駆使した開発事例も多く、多岐にわたる技術スキルを保有しているため、クライアントの様々なニーズに応えることが可能です。
株式会社ユニティ

出典:株式会社ユニティ
株式会社ユニティは、主に園児や小学生といった子どもたちを対象とした、知育・教育アプリケーションの開発と運営を行っている企業です。
【教育アプリの実績】
- 「あそんでまなぶ! for スクール」を自社で開発・提供
- 日本語学習者向けのアプリ「あそんでまなぶ! for にほんごにゅうもん」も提供
子どもたちの知能を育むためのコンテンツ企画力と、iOS、Android、PCといった複数のプラットフォームに対応できる開発技術が同社の強みと言えるでしょう。
株式会社エレファンキューブ

株式会社エレファンキューブは、eラーニング教材やデジタルコンテンツの制作を専門としており、子ども向けから企業研修、生涯学習に至るまで、幅広い教育コンテンツの開発で実績を積み重ねている企業です。
【教育アプリの実績】
- 2008年の創業以来、毎年200件以上の教育教材制作を受託
- 教科書付録アプリ、英語発音練習、算数シミュレーション、資格試験対策など、多様な教育・学習アプリの開発に対応
教育系アプリに特化した開発ノウハウを確立しており、iOSとAndroidの両OSに初期段階から対応するハイブリッド開発を採用しています。
ティ・アンド・ティ・ユナイテッド株式会社

ティ・アンド・ティ・ユナイテッド株式会社は、2011年の創業以来、教育業界に特化したサービスを提供している教育アプリ開発の専門企業です。
【教育アプリの実績】
- 30本以上の自社開発教育アプリをリリースし、年間で1万件を超えるダウンロード実績を記録
- 算数フラッシュカード「Pureシリーズ」や、授業で活用できる投票アプリ「Clickest」など
スマートフォンやタブレット向けの学習アプリ開発から、法人向けのモバイル学習ソリューションの提供、さらには電子教材の出版まで、教育に関する幅広いサービスを手がけています。
ネオス株式会社

出典:ネオス株式会社
ネオス株式会社は、教育・知育分野におけるデジタル化支援やアプリケーション開発で多くの実績を持つ企業です。
【教育アプリの実績】
- 学校教材・学習分野では、出版社と協業して漢字・計算ドリルなどのデジタル教材や学習支援アプリを開発
- 幼児向け知育分野では、ディズニーやきかんしゃトーマス等の人気キャラクターを活用したゲームアプリを提供
企画・デザインから開発、そして運用に至るまで一貫して対応できる体制を持ち、ユーザーにとって最適なUI/UX設計と効率的な開発プロセスを通じて、質の高いコンテンツを生み出しています。
まとめ
教育アプリの開発費用は、子ども向けからオンライン授業・動画配信アプリまで、種類や機能によって大きく変動します。
見積もりは主に「開発手法」「アプリの機能要件」「保守・運用内容」の3つの要因で左右されるため、これらを理解しておくことが重要です。
また、見積もりを依頼する前には「アプリの目的の明確化」と「開発スケジュール・予算上限の設定」を済ませておくことで、開発会社との認識のズレを防ぎ、スムーズな進行が期待できるでしょう。
そして何よりも、費用だけで開発会社を選ばず、その会社の教育分野での実績・コミュニケーションと提案力・料金体系の明確さ・サポート体制を総合的に見極めることが大切です。